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実践!プレスリリース道場

5000人以上の声を分析 『ゼクシィ』の調査リリース活用

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。

PR業界内ではJTBの海外旅行調査を筆頭に、毎年必ず配信される定番調査リリースが存在します。今回紹介する「ゼクシィ結婚トレンド調査」も欠かせないもののひとつです。

『ゼクシィ』は1993年にリクルートが創刊した結婚情報誌で、分社化した現在はリクルートマーケティングパートナーズが自動車部門、進学部門などとともに受け持っています。かつてはグループ全体のリサーチ部門がありましたが、現在は同社が運営するリクルートブライダル総研が「ゼクシィ結婚トレンド調査」などを手がけています。

ブライダル総研所長の鈴木直樹さんによれば、この「結婚トレンド調査」が始まったのは1994年、『ゼクシィ』創刊2年目ごろのことです。当初はメディアへの配信は考えておらず、営業用のデータにするために始めたもので、冊子にして取引先にサービスで配っていたといいます。

「でも次第に、『ゼクシィ調べ』としてこの調査結果をウェブや紙資料などに使わせてほしいという取引先が増えてきて、そのうちメディアからも同様の要望が来るようになりました。そのような声を受けて、2004年から調査リリースとして配信するようになったんです」。

当初は首都圏だけの調査で、アンケートの回答も288サンプルだったのが、2017年の調査では北海道から九州まで全国15地域、回収したサンプル数は5371件にのぼったといいますから、約20年でいかに調査規模も雑誌自体も成長したかが分かります。

調査期間は2017年4月21日から6月5日。2016年4月から2017年3月の間に結婚した、もしくは結婚予定があった読者に調査票を郵送しています。ネット回答でないのが意外でしたが、約500もの質問があると聞き、ペーパーでないと無理だと納得しました。女性の意識を把握するため回答者を妻(女性)に限定していますが、男性だと根気が続かないかもしれないなと、我が身を振り返ってしまいました。

時系列で設問が進んでいくなど、回答しやすい工夫をしているそう。文章での回答がなく、「その他」を選択する以外はすべて選択式なのも答えやすい理由です。逆に言えば、自由記入する必要がないほど、徹底して質問を細分化しているということでしょう。

毎年約500問のうち10問程度は質問を入れ替えたり、選択肢を改訂したりするそうで、その中に最近のトレンドが反映されます。同総研の研究員である山岡あやりさんによれば、最近人気が高まっているのが「ベールダウン」。

花婿が花嫁のベールを上げる「ベールアップ」に対して、その前に花嫁の母がベールを下ろしてあげる儀式だそうで、私もまったく知りませんでした。挙式の前にベールダウンを入れることで、母娘ふたりの時間が持てるのだそうです。「新しい演出やトレンドは"その他"のフリーアンサーにヒントがあるので、その兆しを察知して設問に反映します」と山岡さん。

また、「その結果を雑誌『ゼクシィ』の編集に活かしたり、反対に編集部が感じた"兆し"をアンケートにフィードバックすることもあります」と、同誌編集長の平山彩子さんは言います。

そうして人気が出たり、仕掛けたりした演出の中には「体重ベア」や「三連時計」があります。前者は、花嫁や花婿が生まれた時と同じ体重のテディベアを贈るもので(お米は聞いたことがありますが)、後者はつながっていた3つの時計を新婚家庭とそれぞれの実家が分けて持つことで同じ時間を刻んでいけるのだといいます。「三連時計は一般的には知らない人が多いのですが、花嫁の間では認知度が高い、知る人ぞ知る商品です」と平山さん。

回答を締め切ったあと、集計に約1カ月かけ、7月から結果の分析やまとめを始めて10月の配信に至ります。

タイトルにトレンドを明記

ではここからは、そのリリースを見ていきましょう。合計9枚で非常に詳細な内容です。(ポイント1)表紙は全体を凝縮したサマリーであり、目次代わりにもなっています。



この構成は、往々にして枚数が多くなりがちな調査リリースでは定石です。調査はおおまかに「費用面」「演出面」の2方向から実施しており、ページ下部ではそれぞれのポイントを簡潔にまとめています。最も目立つタイトルには、調査の結果見えてきた傾向を。ここがメディアとしては一番知りたいところで、費用の総額と「自然体で楽しめるスタイル」と今年の傾向を結論づけ、最初に読み手に伝えています。

2枚目は調査概要と回答者のプロフィール。(ポイント2)非常に詳細な表組みと、回答者が5000人以上いるということを載せ、大規模で信頼性のある調査であることを読み手に印象づける意味で、調査のバックグラウンドをきちんと載せています …

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