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実践!プレスリリース道場

プレスリリースでSNS拡散を狙うなら、ニッチメディアへアプローチを

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。

今月は、私が代表を務めるカレー総合研究所の一事業である「カレー大學」のリリースで、面白い動きを見せた案件があるので紹介したいと思います。

カレー業界では、毎年のように新しいトレンドが生まれています。今年はスパイスカレー⋯⋯と言ってもカレーに詳しくない方、しかも関西以外の方にはまだピンとこないかもしれません。大阪発のスパイスカレーは、カレーソースの上に多種のスパイスを大量に振りかけるなど、従来とは異なるスパイス使いのカレーです。

その斬新な調理方法とスパイシー感が際立つ味わいで、大阪では一大ブームを呼んでいます。しかも料理の専門家ではなく、バンドマンやクリエイターたちが副業や趣味として始めたものが人気を得て、地域文化にまで発展しつつあるユニークな成立過程も持っています。

カレー文化の第一人者である私としては、徐々に東京にも広まりつつあるこのスパイスカレーを、何とか後押ししたい思いがありました。すると、カレー好きの文化人が、所有する銀座のバーを貸してくれるという話が出たのです。

そこで、カレー大學の期間限定アンテナショップという形で、東京のど真ん中でスパイスカレーを提供する「カレー大學 銀座食堂」をオープンしました。営業期間は7月の1カ月間、土・日の11~14時のみという、ある種、幻のようなお店です。シェフにはカレー大學の大学院を卒業した気鋭の山崎三芳氏を起用しました。

ただし、私もバーのオーナーも、テストマーケティングのような感覚がありました。なにせ営業日は土日だけで限定的だし、シェフも実力派とはいえまだ世間的には知られておらず、席数も20席ほどしかない小規模店舗。大手メディアが決して取り上げてくれない要件が揃っています。看板も出ていないし、オーナーと「ガラガラかもね」と冗談半分で話していたのです。

ところが、いざ蓋を開けてみると連日の大盛況。営業時間は14時までなのに、13時には品切れで閉店になってしまうことが多く、ときには12時で終了する日もあるほどでした。短い営業時間をめがけて、カレー業界や外食産業、グルメリーダーなど、多くの業界関係者が押し寄せたのです。広報的には悪条件が揃っていた中で、なぜ成功を収めることができたのか?それが今回のテーマです。

拡散の鍵はニッチメディア

先に結論を言ってしまうと、新聞やテレビなどの大手メディアを狙うのでなく、"ニッチメディア"を狙う作戦が当たったのです。大手メディアでの掲載が難しそうだからリリース配信を止めてしまうのではなく、小規模なメディアにアプローチすることでうまく情報が拡散していったのです。

具体的にはどんなメディアかというと、ウェブメディアと個人の情報発信サイトです。前者はメジャーではありませんが、一部の読者に特化しているぶん、その層には知られた存在です。その層とこちらの情報がミートすれば、直接的に大きな効果が得られます。

後者は個人が発信しているブログやSNS、Facebook、LINE、Instagramなどのメディアです。軽く見られがちですが、数万人の読者を抱える発信者もいます。率直に言えばヘタな雑誌などに載るよりも、ずっと大きな効果が期待できるメディアなのです。

今回はそうしたメディアをメインターゲットにリリースを配信しました。特に個人の情報発信サイトは記事を書きたくてうずうずしており、常にネタを探しています。しかし個人レベルで活動しているので、ネタの収集力には限界があります。そこにまとまった形で情報が載ったリリースを配信するのです。彼らにとって、そのままネタにできるのでありがたい。だから高い確率で掲載に結びつくというわけです。

記事のまとめやすさを意識

では、そういうメディアにどんなリリースを配信すればよいのか、実物を見ながら解説していきましょう。まず心がけるのは、(ポイント1)書き手が情報発信しやすい論理構成でタイトルと本文をつくることです。トレーニングを受けたプロの記者とは違い、セミプロが多いため、リリースの流れで記事を作成できるよう配慮するのです。

このリリースでは、大阪でスパイスカレーが流行(起)→東京では食べられないので、カレー大學が銀座でアンテナショップをオープン(承)→ところでスパイスカレーとはどんなもの?(転)→この機会に本格的なスパイスカレーを東京で食べてみよう!(結)という流れで構成してあるので、記事としても非常にまとめやすいはずです ...

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