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本田哲也のGlobal Topics

2018年を予測 世界のPRの潮流は?

本田哲也

2017年 カンヌライオンズPR部門審査委員長のカレン・ヴァン・バーゲン氏。「Earned at Core」という発想が重要になると予測する。

2018年も幕を開けました。おかげさまでこのコラムは5年目を迎えます。本年もよろしくお願いいたします!

今回は新年にふさわしく、グローバルPRの2018年予測をお届けしよう。変化の激しいPR業界だが、世界のキーパーソンは2018年の潮流をどう見ているのだろうか。

「短期的には、いくつか懸念がありますね」。権威あるPR情報機関「ホルムス・レポート」の代表、ポール・ホルムス氏は話す。同氏は、世界3大PRアワードのひとつである「セイバー賞」の主催者として知られる業界のご意見番だ。「残念ながら、2017年下期のPR業界は低成長でした。トランプ政権やBrexit(ブレクジット)の影響もまだ懸念されます」。

たしかに、世界大手のオムニコムグループ傘下のPR会社でも、2017年は広告会社の成長率を下回った。「しかしながら、長期的には楽観視しています。あらゆる企業活動やマーケティングにおいて、『信頼性』がますます重要になっているからです。結局のところ、企業やブランドの信頼性を上げるのは広報PRであり、2018年もそのニーズは増大します。PRパーソンにとって肝要なことは、Earned mediaだけに留まらず、Paid mediaやOwned mediaも駆使したリレーション構築ができるかどうかでしょう」。

「2018年のPRビジネスには楽観的です」。そう切り出すのは、2017年のカンヌライオンズPR部門審査委員長、オムニコムPRグループCEOのカレン・ヴァン・バーゲン女史だ。

「我々の仕事もずいぶん変化しました。広報代理のリテナー契約は減り、コンサルティング力が付加価値となり、統合的な施策が求められます。一方で、企業コミュニケーションにおいては『Earned at Core(アーンドアットコア)』という発想がますます重要になります。そこにPRのニーズがあるのです」。この点においては、ホルムス氏とバーゲン女史の意見は一致する。

「そしてもうひとつ。2018年はPR効果測定の議論が深化するでしょう。業界全体で推進すべき領域ですね」。

僕たち広報PR従事者にとっては、実に心強い予測で少しホッとする。しかしそれは同時に、大きな潮流にそぐわない仕事は淘汰されるということだ。個人的には、業界内でサイロ化した専門性の統合がより進むと予測している。企業広報とブランドPR、危機管理広報とPRクリエイティビティ。社内でも部署が分かれていたり、従事者が別々であったりするケースが多かったが、これからはニーズの一本化が進むだろう。

PRで攻めれば攻めるほど、炎上リスクも高まる。大変だけれどチャンスでもある。2018年を実のある年にしましょう。ではまた来月!

本田哲也(ほんだ・てつや)

ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長/戦略PRプランナー。
「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」にPRWeek誌によって選出された日本を代表するPR専門家。著作、国内外での講演実績多数。カンヌライオンズ2017PR部門審査員。最新刊に『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

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