日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

企業のコンテンツ戦略とオウンドメディア入門

「PESOモデル」から考えよう 広報主導のオウンドメディア

馬渕邦美(フライシュマン・ヒラード・ジャパン)

コミュニケーション領域で今、大きな地殻変動が起きている。本稿では広報が押さえるべきPESOモデルを紹介しながら、事例を交えてオウンドメディアの役割と今後の戦略を考えます。

広報の役割が、今ほど注目されている時代はありません。私はグローバル・メガエージェンシーのトップとして、広報を含むすべてのマーケティング領域で企業のコンサルティングに携わってきましたが、2017年はそれを強く実感しています。

その前提として挙げられるのは、「広告が効きにくくなっている」ということ。既に各所で語られているので詳説しませんが、生活者がマスメディアから一方的に情報を享受するしかなかった時代、企業が伝えたいことを発信する手段として広告は有効でした。

ところがネットの登場、とりわけスマートフォンの普及とSNSの浸透によって、生活者は膨大な情報にさらされるようになりました。情報元もマスメディアだけに留まらず、無数のウェブメディア、さらに一個人も今や立派な発信者です。商品やブランドに対して何か疑問を感じたら、少し検索するだけでたくさんの情報が手に入ります。

そんな中、企業が広告で言いたいことを声高に押しつけても、以前のように生活者に響かないのは明らかです。

変わるユーザーの意思決定

それは既に科学的にも証明され始めています。アメリカで毎年3月に開かれているエンターテインメントやネット関連の一大イベント「SXSW」(サウス・バイ・サウスウエスト)では今年、「This is Your Brain.This is Your Brain on Ads」という講演の中で「95%の消費者は、その判断に広告が影響しない」というデータが紹介されました。今、人々の意思決定は潜在意識と深く関わっていて、直接的な広告によって購買を決める人は極めて少なくなっているのです。

また、Googleは早くも2011年に「ZMOT(Zero Moment of Truth)」という概念を提唱し、AIDMA、AISASに次ぐ意思決定プロセスとして話題になりました。これを買おう、という最初の決定的瞬間(First Moment of Truth)よりもさらに手前の心理を指しており、まだ購買の意思が固まらない段階から情報に触れ、緩やかに意思が固まっていくような現象を指しています。

事実、日ごろから私たちはちょっと興味を持ったらすぐ検索しますし、SNSに流れてくる記事も深く考えずに次々と摂取しています。その中で企業のメッセージに振り向いてもらおうと思ったら、広告的なコミュニケーションだけでは不十分と言えます。

広告のような分かりやすい伝達で説得するのではなく、伝えたいことと相手が興味を持つテーマの間を探って「欲しいと思ってもらえる情報」を構成し、潜在意識に働きかける、まさに広報的な手法が必要……というよりむしろ、広報的な視点なくしてはもはやモノも売れず、生活者と良好な関係を築くこともできないと言い切ってもいいでしょう。これが、広報の役割が注目され、大いに活躍が期待されている理由です。

広報視点の「PESOモデル」

伝えたいことと相手が興味を持つテーマの間を探って「欲しいと思ってもらえる情報」を構成する、と書きました。この手法こそが、コンテンツ・マーケティングです。マーケティングのいち手法と思われているかもしれませんが、実は広報の主導でも多くの企業で実践されています。オウンドメディアは、このコンテンツ・マーケティングを実践する場として非常に重要なチャネルです。

それを語る前に、まずオウンドメディアを含めた現状のメディアのランドスケープ「PESOモデル」を紹介しましょう。あらゆるメディアは顧客や生活者との接点であり、マーケターや広告会社はこれらの接点をよく理解して戦略をつくり込んできましたが、これからは広報こそ各接点の特徴を踏まえてカスタマイズし、コミュニケーションを統合していくことが求められます。

「PESOモデル」とは、それぞれPaid Media(広告)、Earned Media(パブリシティ)、Shared Media(生活者のSNSやブログ)、そしてOwned Media(企業ウェブサイトや公式SNSアカウント)を指しています。2014年、アメリカ有数のPRパーソンであり経営者のジニ・ディートリッヒ氏が提唱しました。

時期を同じくして、日本ではマーケティング領域を中心に「トリプルメディア」という言葉が流行したと思います。ここではメディアをPaid、Earned、Ownedの3つに大別し、Earnedが主にSNSやブログ、口コミを指していました。推測ですが、マーケティング視点だと「パブリシティで評判を獲得する」という発想が欠けていたのではないかと思います。そこを補う形でPR業界として提唱し支持しているのが、「PESOモデル」です(図1)

図1 PESOモデル(by Gini Dietrich)

参考/http://spinsucks.com/communication/pr-pros-must-embrace-the-peso-model/

オウンドメディアの役割

この中で、オウンドメディアは企業が管理・主導でき、かつ世の中の関心事とブリッジすることで生活者を呼び込める点が特徴的です。ウェブサイトや公式SNSを指すことが多いですが、広義には紙の広報誌や、店舗やミュージアムといったリアルチャネルもオウンドメディアの一種ですね。これらも、今は誰かの目に留まればあっという間にネット上でシェアされるので、同じように捉えられると思います。

広告が効きにくく、パブリシティと一般SNSやブログがコントロールできない中、これら3メディアとのバランスをみながらオウンドメディアで適切な発信をして、総合的にブランドの良い評判が世間に広がるようにしていくこと。いわばレピュテーション・マネジメントがオウンドメディアの役割であり、広報によるオウンドメディア活用のひとつのゴールになるでしょう。

では、現代に有効なコンテンツ・マーケティングと、それをオウンドメディアでどう展開していくのが望ましいかを考えていきます。

広告に代わって、企業が情報を届けていく手段として注目されたコンテンツ・マーケティングは、よく広告との対比で語られます ...

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

企業のコンテンツ戦略とオウンドメディア入門の記事一覧

企業のコンテンツ戦略とオウンドメディア入門の記事一覧をみる

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する