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企業のコンテンツ戦略とオウンドメディア入門

資生堂・コクヨ・サイボウズが語る「オウンドメディアの進化形」

資生堂・コクヨ・サイボウズ

企業がオウンドメディアを運営する意義は何なのか。どう「ブランディング」と「宣伝」のバランスを取り、社内にその価値をアピールすべきか。読ませるコンテンツを発信し続ける3社のスタンスから考えたい。

(左)コクヨ ファニチャー事業本部 ワークスタイル研究所 所長 若原 強 氏
(中)資生堂 企業文化部 花椿編集室 編集主幹 住 佳織衣 氏
(右)サイボウズ コーポレートブランディング部 サイボウズ式 編集長 藤村能光 氏

なぜオウンドメディアなのか

住:資生堂の企業文化誌「花椿」の起源は、1924年に創刊された「資生堂月報」までさかのぼります。その後、前身となる「資生堂グラフ」という企業情報誌が1933年に発刊され、1937年の「花椿」の誕生につながりました。もともとは、資生堂の愛用者組織「花椿会」の会報誌として創刊されたものです。

戦時中の10年間は休刊しましたが、1950年に復刊して以降は現在まで続いて、今年で創刊80周年を迎えました。2015年までは、主に化粧品店や百貨店の店頭で配付する月刊誌でしたが、昨年ウェブと紙媒体の2つの形態によるメディアにリニューアルしました。オリジナルコンテンツによるウェブは昨年の6月にスタートし、紙の方は昨年11月にパイロット版を発行。今年の4月からは季刊となりました。

ミッションは、資生堂の魅力をもっと若い世代に認知していただき、愛着を持ってもらうこと。また、従来から資生堂を愛用してくださっている方々にさらに好きになっていただくことです。

内容や発行形態は、長い歴史の中で何度か変わっていますが、根底に流れているスピリットは、現代女性の生活がより美しく、楽しくなるためのヒントをお伝えしようということです。

藤村:サイボウズはチームで情報を共有できる企業向けグループウェアを提供するソフトウェア会社で、8月8日で創立20周年を迎えました。オウンドメディア「サイボウズ式」は2012年5月にスタートし、今年で6年目を迎えます。オンラインのみで、誰もが閲覧できるコンテンツを掲載しています。内容はチームワークや働き方に関することがメインで、記事の公開は週2本ほど。本数にはこだわっていません。

サイボウズという会社を多くの方に知ってもらうことが当初からの目的です。直接のお客さまである情報システム部門では当時から知られていましたが、ビジネス拡大のためにはもっと幅広く認知を広げたいと考えていました。

ユーザーが本当に読みたい記事であることを重視し、自社製品のPRを掲載しないことが編集方針のひとつ。これは、それ以前にブログサイトを立ち上げた際に失敗した経験によるものです。このことは、現在の形をつくるにあたって重要な要素といえます。

若原:オフィス家具を扱うコクヨのファニチャー事業本部のオウンドメディアを2つご紹介します。ひとつは冊子とオンラインで運営している「WORKSIGHT(ワークサイト)」で、2011年に立ち上げました。もうひとつの「ワークスタイル研究所」というウェブサイトは、今年の7月20日にスタートしたばかりです。

「WORKSIGHT」は冊子を年に2回発行しているほか、ウェブサイトでは冊子の内容に加えて週に1本のペースでインタビューなどウェブ用のコンテンツを掲載しています。世の中の働く場をつくる人々に「世界にはこんなに面白い働く場所、面白い働き方がある」と広めることで、働く場所を良くするきっかけにしてもらうことが発行の目的です。コクヨの企業色を前面に出していないのは、市場をつくり、新たな考え方を啓発する一端を担いたいとの思いからです。

「ワークスタイル研究所WEB」は、同名の組織の公式サイトという位置づけ。少し先の未来に必要とされる「未発見の働き方」をいち早く試して具現化することで、世の中に向けて新しく楽しい「はたらく」を提案していくというミッションを掲げています。日ごろの研究の活動報告を随時行うなど、フレキシブルに使っていきたいと考えています。

いずれもBtoB企業のオウンドメディアであること、それにR&D(研究開発)部門のオウンドメディアであることが特徴といえます。当社の扱うオフィス家具という商材は、モノ自体は比較的同質化に陥りやすいため、コクヨは働き方や働く場所から家具を考えているという点を伝えたいという側面もあります。

    コクヨ

    WORKSIGHT

    「はたらく」にまつわる海外の先進事例を伝える。オンライン版も運営する。

    ワークスタイル研究所WEB

    研究メンバーが自ら実行、考察した内容を中心に発信する。

編集方針とコンテンツ選定

住:資生堂が掲げる「美しい生活文化の創造」というミッションをベースに、クリエイティビティや文化的な要素を加えて、独自の花椿らしいコンテンツをつくり上げるようにしています。現在は直接的な商品情報は掲載していませんが、資生堂のものづくりの根底にある美意識や商品のブランドが発信する世界観とはゆるやかに連動するように心がけています。

藤村:面白いもの、読者にとって価値があるものであれば、競合する部分がある会社の情報でも取り上げています。ITを使って情報を共有するサービスとしては、マイクロソフトやEvernote、Facebookなども携わっていますが、そうした会社やサービスの記事を掲載することもあります。

若原:「WORKSIGHT」は、毎号で国とテーマを決め、主に海外の先進的なオフィスや働き方を推進している企業を紹介しています。「ワークスタイル研究所WEB」では、実際に自分たちで実験するなど、独自研究の結果を記事で発信しています。

最近では、アップルの故スティーブ・ジョブズやFacebookのマーク・ザッカーバーグ、オバマ前米大統領も好んだという「ウォーキング・ミーティング」について扱いました。歩きながらのミーティングがワークスタイルとしてどのような効果があるのか、企業に勤める人間はどのように取り入れることができるのかを実験して、そこで得られた効果と取り入れ方を提案するレポート形式の記事です。

藤村:テーマの選定は、個人のアイデアを自由に共有するところから始めます。情報共有サービスの会社なので、社内でもオンラインのコミュニケーションが活発で、グループウェアに立てたスレッドに「こんなの面白いかも」「その企画いいね」とアイデアを投げ込んでもらっています。雑談のようなネタ出しが、記事をつくる最初のきっかけになっています

若原:「ワークスタイル研究所WEB」はまだ立ち上げたばかりですが、ゆくゆくは「サイボウズ式」のような記事のつくり方にしていきたいと思っています。今はオンラインでチーム内の情報交換をしています。やりとりで盛り上がったネタを研究企画のフォーマットに落とし込んでもらい、そこから担当者と私とのブラッシュアップを経て研究テーマを設定し、それが記事のもとにもなるという仕組みを構築していきたいです。

藤村:私たちも、オンラインのグループウェアで出たアイデアを話し合う編集会議を、週に1回行っています。ただ、会議とはいえ雑談の延長のようなものです。編集長として企画をジャッジすることは一切しません。みんなが出し合ったアイデアを「この企画、どうすればもっと面白くなるかな」と井戸端会議のような話し合う雰囲気を意図的につくるようにしています。

こうした形態をとるのは、編集会議で盛り上がる内容は結果として関心を持たれ、読まれる企画になることが多いからです ...

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