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IRの学校

IR型株主総会のすすめ

大森慎一(Japan REIT 社長室長)

株主総会を控え、準備を進める広子たち。上場後、3回目の準備で、総務部など関連部署との連携もリードする立場になっている。今日は、完成に近づいた準備の確認をするつもりだ。

広子:こんばんは。

大森:こんばんは、早めのご到着だね。そろそろ株主総会の準備も活況だろうに、大丈夫?

東堂:こんばんは、そうなんですよ。私はIR室に配属後、初めてなので、広子先輩についていくのがやっとなのですが。

広子:大森さん、ちょっと準備状況を確認していただけますか。株主総会招集通知、総会シナリオと総会用スライドでしょ。想定問答集、そして総会後に開催する「経営近況報告会」の資料です。

大森:おおっと、盛りだくさんだね。それはそうと、今年の総会のテーマはなんだい?

広子:うっ、テ、テーマですか?

大森:あれっ、前はテーマを設定していなかったっけ?「みんなで語ろう会社の未来」とかなんとか?

東堂:そういうのはありませんが、社内打ち合せでは「愛用者が株主に、株主が愛用者に」という位置づけは確認していますね。

大森:なるほど、目標は変わっていないんだね。

広子:何かいいキャッチフレーズないですか?今年のトレンドとして。

大森:そんなに流行を追う必要もないけど。そうだねえ、やっぱりコーポレートガバナンス(CG)コードとスチュワードシップ・コード(Sコード)の本格導入から日が浅いから、これを意識する必要はあるかもしれないね。

東堂:CGコードは分かりますけど、機関投資家の株主さんを意識するべきですか?

大森:そうでなくて、「投資家との対話元年」という意味でね。

広子:なるほど、そういう意味では、今年もIR型株主総会で行きますから、対話重視をテーマにします。

大森:なるほどね、じゃあ、それを前提に見せてもらうよ。

株主総会のシナリオは?

大森:ひととおり目を通したけど、まあ3回目の準備だし、そこそこ手堅いイメージだね。

広子:えっへん、頑張りましたからね。

大森:さて、シナリオからお聞きしましょうか。想定している流れをメインにするのは分かるけど、イレギュラーな事項が起きたときのシナリオは用意している?

広子:動議対応や長引いた時の休憩とか、そのあたりは用意しています。

大森:なるほどね。その辺りはイレギュラーではなく通常範囲だよ。例えば、取締役が病気や事故で出席できない時は?それが議長の社長だったら?

広子:ううっ、用意します。

大森:それから、部門からの報告は、各担当取締役が行うの?一括上程・審議方式になっているけど、対話重視って言える?質問打ち切りのタイミングは、質問が切れたらで大丈夫?

広子:一度に言わないでください。ええっと、部門からの報告も何も、事業報告などはビデオでやりますから、それはないですね。

大森:対話重視という意味だと、担当取締役の声、直接聴きたいと思うけどな。

広子:そうですね、質疑応答の部分で対応します。一括上程って何ですか。

大森:一括上程・審議方式って、普通は上程と審議を順に個別に行う報告事項や決議事項を一度に報告して、審議・質疑応答をまとめてやる方法なんだけど。総会屋対策で考え出されたものだから、対話時代にはそぐわないっていう人もいるからね。

東堂:総会屋対策?ですか?

大森:まあ、一括して上程して説明するから議事は進行するし、まとめて質問を受けるから、同じ質問を避けられるし、質問の打ち切りも比較的しやすいイメージかな?

広子:東堂さんは、総会屋がイメージしにくいって聞いていると思うんですけど。昭和なワードですから。

大森:わはっは、昭和かい。そりゃそうか。いずれにしても、議事進行の方法はメリットとデメリットがあって、一概にどうって話ではなく質問されたときにきちんと説明責任を果たせるか、という準備だね。

広子:はい、質問打ち切りのタイミングは普通でいいですよね。

大森:そうだね、時間や質問数といった物理量を一つの基準にするのはいいと思うよ。その上で、対話重視のために何をすべきか、だね。

広子:そうか、対話重視という立場だと打ち切りづらくなりますね。

東堂:でも、その「総会屋」さんじゃないですけど、しつこく聞いてくる人いますよね。同じ質問を繰り返して、悪意があるんじゃないかって思う時ありますよ。

大森:そうだね、まずいろんな対話の場面を用意して誘導するのはどうかな。株主総会で質問したくてもできない株主さんもいるだろうし。

広子:なるほど、経営近況報告会もあるし、展示ブースに担当役員を配置して、そこで対話してもらうのもいいですね。

大森:それから、悪意がありそうな質問対策だけど、Sコードを意識してはどうかな?対話の前提として、「建設的な目的」を共有して、というのがあるよね。

東堂:繰り返しの質問には建設的な目的があるとは感じられないから打ち切る、という感じですか。

大森:実際の言い方は難しいけど、毅然とした態度は、他の株主が応援してくれるんじゃないかな。

広子:株主さんは目的を同じくした同志だ、と思えばいいですね。まだ、間に合うことありますね。各役員を巻き込んで頑張ります ...

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