800近くある国公私立大学が受験生や資金を求めて競争する教育現場。スポーツ選手を多く輩出する東洋大学で広報を務める榊原康貴氏が、現場の課題や危機管理などの広報のポイントを解説します。

4月28日に開催した発表会の模様。当日は主要メディアはもちろん、厚生労働省、ランキング上位企業のダイバーシティ担当者も参加。活発な意見交換が行われた。
広報活動を通じて大学は社会とつながりを持つので、社会の関心事に上手く合わせていくことがとても重要です。送り手からの情報が受け取り側の身近な話題であればあるほど、関心を示します。
世間の関心事に大学広報はどのようなアプローチができるのでしょうか。社会貢献という角度からも、大学はたくさんのアプローチを行ってきましたが、今回のこの連載では研究リソースを主体とした、世間の関心事に寄り添う広報、と題しまして、2017年4月に発表した東洋大学「女性活躍インデックス」と法人ランキング2017についてご紹介します。
女性活躍企業を見える化
長時間労働の是正や育休の取得など、労働環境の整備は世間の関心事であり、政府の成長戦略にも働き方改革や女性活躍が大きく掲げられています。それを受け女性活躍推進法が2016年4月に施行、女性の職場での活躍を強力に推進することになりました。
働き方や女性活躍のテーマは日々ニュースで取り上げられ、その重要性や社会の期待度の高さを感じることができます。しかし、具体的な取り組みは紹介されても、実際に世の中の女性活躍はどの程度進んでいるのか、少しモヤモヤしているような状況でした。
折りしも、2016年は東洋大学に女子学生が入学して100年の節目(日本の私立大学では女子学生の受け入れははじめて)。東洋大学の研究リソースを活用して、女性の活躍を支援できないか学内で検討が進んでいました。その成果が、この4月に発表した「女性活躍インデックス」という指標です。実社会での女性活躍の状況を、東洋大学の視点でクリアにする「見える化」を目指した取り組みです。
このテーマは、社会的な意義がとても大きな取り組みです。しかも指標の設定だけでなく、女性活躍企業のランキングまで発表したのです(図1)。ある意味では東洋大学の価値観で、ランキングを勝手に発表してしまうという試みでもあります。企画段階から私たち広報課も参画し、単なる発表では終わらないように広報計画を考えました。
ランキングものはご存じの通り、流通しやすく、ネットでの拡散が期待できます。一方で世間の納得感が乏しいものだと、話題になるどころか大炎上を起こしかねません。
私たちの大学としても短歌コンテストなどは過去に実施していますが、ランキングの発表というものには知見がなく、発表でのコミュニケーションストーリーをいかに組み立てるかが大きな課題でした ...