旧パチンコ店建物をリノベーションし、デザイン事務所オーナーが経営ご近所割引など近隣販促にも注力
都営地下鉄新宿線菊川駅から徒歩1分、2022年9月に開館して1年を迎える映画館がある。水色のロゴやのぼりが目印の「Stranger」だ。同地にかつてあったパチンコ店跡地を利用してつくられ、席数は49席。特集上映を中心に日本未公開作や上映権利が切れた作品など独自のプログラム編成。
運営するのはブランディングデザイン会社、アート&サイエンス代表取締役の岡村忠征氏。映画館には珍しい墨東地区でオープンしたのには訳がある。当初は岡村氏自らが住まう東急東横線沿線で候補地を探したが、住宅地で用途規制の観点からも難しい。そこで準工業地帯の下町地区に視線を移し、パチンコ店跡地が見つかったという。
岡村氏は会社設立前の約10年間、映画館のバイトから、黒沢清組現場スタッフなど業界に様々な形で携わった経験がある。その後は自ら立ち上げた会社の仕事で忙しく、ほとんど映画を見ない日々が続いていたそうだが、コロナ禍で改めて映画館に目を向けてみると、ある気づきがあったと話す。
「近所を散歩すると古着店や古書店など個人経営店では客の好みを尋ねて商品を紹介するやりとりなどが多いですが、映画館でそのようなコミュニケ―ションを行っている施設はまずありません。客が静かに映画を鑑賞するだけの『ミュージアム型』でなく、スタッフとの間や客同士でも観た後に意見を交わし情報をシェアしあえる『ギャラリー型』の映画館ができないかと思ったのです」と明かす。なので...