リアル店舗の存在価値として、直に触れる以上の体験価値を提供する試みに注目が集まっている。東京・原宿にオープンした「NANGA SHOP HARAJUKU」では、マイナス5度の空間で自社製のダウンや寝袋の着心地を体験できる冷凍試着室を常設。商品の魅力を体感できると話題だ。

店舗左手は手前からダウンジャケット、寝袋の順で整然と並ぶ。右手は山小屋のようなつくりでダウン以外のアパレルアイテム、布団などを展示。
コロナ禍で好調とされるのが、アウトドア関連の業態。キャンプ層の拡大や電車で行ける施設の増加で、一過性ではない人気となっている。
寝袋を中心に展開するアウトドアブランド「NANGA」は、2022年9月10日、東京・原宿に旗艦店「NANGA SHOP HARAJUKU」をオープン。自社工場をイメージした店内では、オリジナルの寝袋やダウンが並べられている。10月22日には直営店舗では東海エリア初出店となる名古屋店もオープン。こちらの大型ラックには名古屋城の「しゃちほこ」から着想を得たゴールドカラーが施されている。いずれも内装デザインは建築家の谷尻誠氏で、もともとNANGAのファンでもあったという。
特筆すべきは、店舗入り口にある巨大な冷凍試着室だ。同社製品の安らぎを極寒地の状況下で体験できる空間になるように、屋内はマイナス5℃に設定。氷点下での寝袋やダウンジャケットの着心地や温かみを体験してもらう仕掛けだ。
NANGAの原点は、近江真綿布団の産地・滋賀県米原市のダウンメーカー。時代の移り変わりとともに経営の先行を考えたとき、思い切って寝袋メーカーへと業態を変更。高さは世界9番目だが、登頂が困難な山として知られるヒマラヤの「ナンガ・パルバット」から、1995年にNANGAと命名した。そこには創業者である横田晃氏の「困難だからこそやってやろう、みんなが登らんとこを登ったろう」という思いが込められている。
羽毛のプロ集団が寝袋を経て、現在はダウンジャケット、その他のアパレル製品へと商品展開を広げている。ただ、あくまでも主軸となるのは、寝袋・ダウンといった羽毛を使った製品で、プロの登山家にも愛用されている本格的な仕様。秋冬シーズンに新たに投入するものに関しては、すべてダウンの下に着るもの、羽織れるものなど、ダウンにまつわるものにこだわっている。
また、サステナビリティ活動も...