コロナ禍で店舗のあり方の見直しが進む中、松屋銀座が選んだのは変容したライフスタイルに合わせた売り場づくり。地下2階に新設した冷凍食品売り場では、銀座の飲食店と共同開発した新商品など300種類以上取り揃えている。
食文化は時代とともに変化するが、ここ数年急激に伸びたのが冷凍食品の需要。もともと冷凍技術の進歩や専門スーパーの上陸など、商品ラインナップの幅も広がってきたところに、コロナ禍の外出制限の中での買いだめ需要が生まれた。
日本冷凍食品協会の調査によると、2021年度は家庭用冷凍食品の出荷額・生産数量ともに調査開始以来過去最高を記録。国内生産数量も家庭用が業務用を初めて上回った。より多くの冷凍食品を保存するためにセカンド冷凍庫を求める人が増え、一時入荷待ち状態になったほどで、2022年度のヒット商品の1つとなっている。
東京・銀座に店を構える百貨店、松屋銀座の食品フロアでもコロナ禍初期からそれまでは取り扱いのなかった冷凍食品を求める顧客からの問い合わせが増加。また、近隣の飲食店店主とのやりとりで、コロナ禍を機に店舗メニューを冷凍製品にしてみたいという声も出ていた。そして生産者から飲食店の休業によって行き場を失った食材を冷凍食品に加工することは、食品ロスを削減する意味でも有益ではないかという声も挙がった。
そんな三方よしの企画はぜひ実現すべきと、2022年8月31日に自社運営の冷凍食品売り場「GINZA FROZEN GOURMET」をオープンした。
コンセプトは「おいしさと笑顔の引き出し」。松屋銀座で食品の商品開発を担当する今井克俊氏によると、老舗名店やミシュランガイド掲載店、一流店の看板メニューなど、自宅で冷凍食品だけでフルコースができるラインナップ。冷凍ケース4台、55ブランドで300から350品目、洋総菜を中心に、和・中華・アジア総菜、弁当やパン、野菜やフルーツなどの素材系、冷凍スイーツやアイスクリームと多彩に揃えた。
店を構える銀座周辺のレストランやパティスリーと交渉し、新たな冷凍食品の開発を依頼。冷凍食品の開発経験がない店舗には、パッケージデザインや衛生表示のコンサルティングや各種検査など、松屋のグループ企業と連携し、新規参入のサポートも行った。また、松屋と共同開発した製品でも、販路は...