顧客との直接的な接点が失われる事態を招いたコロナ禍を経て、いま企業は顧客との関係性を強化する必要性を強く認識するようになりました。支持される企業やブランドになるための情報の届け方やコミュニケーション手法について、gramsの艸谷真由氏が解説する。
販促担当の仕事といえば、いかに良いイベントを企画してたくさんのお客さまにご来場いただき購買意欲を促してお買い物してもらうか、といった業務も多いのではないかと思います。いままでは来客数の多い立地に店舗を構えていれば、イベントのお知らせをするだけでも十分な集客ができていた可能性もあります。しかし、極力無駄な外出を控えるいまの時代に、立地はあまり関係がなくなり、便利さよりも「わざわざ足を運びたいような関係値」であるかといった感情に行動や購買意欲がシフトされてきました。
つまり、これからの時代に必要なことは「イベント開催がない間にもいかにしてお客さまと関係性を構築できるか」といったことが肝になるのです。単発の集客に頼らずに繋がり続けることで顧客化していく動きが販促担当者にも求められるスキルではないでしょうか。
顧客化していくツールの1つとして、Instagramがあります。発信方法を見直すだけで一度イベントに来てくださったお客さまとそのまま繋がることが実現します。また、「今回のイベントは行けないけれども今度行きたい」といったお客さまに対して思い出してもらうためにもInstagramの発信は効果的です。本稿では、Instagramを代表例に、しっかりお客さまとの繋がりをつくるための発信力の鍛え方についてお話ししていきます。
企画の背景からお客さまとの接点を見つけ出す
イベント設計をする際には、担当者の想いといったものとお客さまに対する想いの両方があるかと思います。イベントの告知をするにあたっても期間や開催場所・イベントタイトルやイベント紹介の定型文だけでは、わざわざ足を運びたいイベントにはなりません。
なぜいまのタイミングにこのイベントを開催したのか、また、どんなお客さまに向けてどういう想いで立ち上げたイベントなのか、といったように企画の背景からイベントの開催までのストーリーが成立するようにお届けすることが大切です。つまり、企画内容とお客さまの関係性をすり合わせる必要があるのです。この作業をすることによって、イベント写真として使用する画像の画角も変わります。
Instagramでお知らせをする場合、投稿画像の印象によってもイベントへ行くか行かないかを大幅に左右します。この写真は今回のイベントとして一番見せるべき写真かといったことも考えましょう。よく見かける告知写真として、イベントの空間全体を切り取った写真を見かけますが、残念ながらその写真ですと来ていただける確率は上がりません。なぜなら、お客さま自身も日々大量の情報を閲覧しているため目に止まらないからです。
前述したように、立ち上げの背景とお客さまが参加するメリットの両方がよくわかる箇所にフォーカスして撮影。写真だけで伝わらない部分は投稿文で伝えるという見せ方がお客さまに響く発信方法になりますので、届けたいことを整理して使用する写真も選んでみましょう。
このようにして、ただ素材を掲載するのではなく、画像・投稿文ともに1つの物語としてお客さま視点を考えた内容に変えることから、まずはアップデートしてみてはいかがでしょうか。
“ブランド”として繋がりたいお客さまについて考える
前置きとして、所属されている会社や売っていきたい商品についてを“ブランド”と表現します。1つ1つのイベントについて背景からお客さまに情報をお届けすることができるようになれば、次はブランドとして発信軸を明確にするステップです。
イベントを企画することは、所属する会社の商品を知ってもらうことから、買ってもらうためのきっかけのためのもの、などがあります。また、お得意さまにより一層ブランドを好きになってもらうための活動であるともいえます。各イベントごとにターゲットはそれぞれ別の場合もあると思いますが、ここに関してもお客さまの共通項は必ずあるはずです。
また、売りたい商品の価格や機能性からも想像してみましょう。例えば、金銭面に余裕がある方が買う商品なのかといったことや、時間の余裕の有無、年齢別のお悩みであったり、欲望であったりなど大きなマーケットの中でまず切り分けることができると思います。その上でInstagramの発信では、より具体的に1つのコンセプトを決め、発信の軸を定めることが継続的にお客さまと繋がり続けるための運用の基本となります。
イベントの有無や新作発表に関係なく、どんなお客さまに向けて発信するのかといった方向性を定めることで、同じ商品を宣伝するにあたっても写真の見せ方(ピックアップする箇所)や投稿文で記載するポイントが安定します。よって、お客さまにしっかりと届く...