企業のDX化が加速する中で、オウンドメディアを立ち上げる企業が増加。一方で目的別、顧客が好むコンテンツ作成に悩み、時間を割いてつくったものが見られないという課題も。今回は、スマートメディアの成井五久実氏がオウンドメディアコンテンツの作成に必要な考え方を伝授する。
オウンドメディアの始まりの事例として、2014年にプロアクティブ社が立ち上げたニキペディアをきっかけに、各社自社サービスを記事コンテンツとして生活者に伝えるマーケティングがブームに。しかし「記事を更新しているのに、集客できない」「費用対効果が明らかにできない」という理由から下火に。その代わりに第三者がわかりやすく情報をまとめるキュレーションメディアが流行しました。そして2020年から再び、トヨタ社のトヨタイムズを筆頭に、企業が独自でオウンドメディアを立ち上げるブームが起こっています。
この背景には2つ大きな理由があると考えており、1つ目はデジタルコンテンツ市場が成熟してメディアの細分化が進んでいることです。情報元が「第三者メディア」から「人」や「企業」へと移り変わってきています。インフルエンサーが自ら記事や動画を作って個人を宣伝する。それと同じように企業も独自の情報を発信することが当たり前になりました。
2つ目の理由は検索エンジンのアルゴリズムの変化です。第三者メディアよりも明らかに企業が発信する一次情報を正しい情報として、検索の上位に表示する風潮が強まっていると感じています。こういった背景から、企業が今オウンドメディアで情報を発信することで、生活者にリーチしやすい環境になってきました。
オウンドメディアの特性と活用方法
オウンドメディアの特性は自社でコンテンツをつくるので文脈をコントロールできるところです。さらにつくったコンテンツをSNS運営や広告に二次活用できるので、一番勝手がいいマーケティング手法だといえます。コンテンツマーケティングを語る上のランドスケープである「PESOモデル※」は、オウンドメディアを軸にすることで、コミュニケーション戦略が描きやすくなります。
広告配信を前提にECで商品を買いたくなる記事をオウンドメディアで発信する、生活者のSNSでシェアしてもらえるようなおもしろい動画をつくるといったように、様々なコミュニケーション目的によってコンテンツをつくります。この連携がうまくいっている企業のオウンドメディアは集客、その先の目的(会員登録/EC購入/資料請求など)を達成するところまで成功しているように見えます。
PVを上げるコンテンツのつくり方
オウンドメディアづくりで一番大切なポイントは「集客戦略をたてる」ことです。オウンドメディアのKPIは企業によって様々ですが、一番多い評価指標は新規顧客の獲得数ともリンクする「PV(ページビュー)数」です。このPVをアップするコンテンツづくりの三大集客源は①SEO対策:検索経由で見られる仕組みをつくる、②SNS対策:ソーシャルメディアで見られる仕組みをつくる③リファラル対策:第三者メディアとの連携(RSS配信)を行い、外部のメディアから人を連れてくる、です。それぞれについて詳しく説明します。
1つ目のSEO対策に関しては、コツコツと毎月狙ったキーワードの記事を上げることで検索からの集客を狙います。まずは自社・他社分析を行い、キーワード戦略を立てることが大切です。グーグルアナリティクスや、検索エンジンの順位や流入総定数がわかる有料分析ツールで、自社が現在検索エンジンで上位表示されているキーワードを調べて強みを把握します。次にベンチマークしているメディアの分析も行い、競合他社が獲得しているワードを参考にしつつ、上位に上げたいキーワードを選定します。
キーワード選定のポイントは、「潜在顧客を獲得するキーワード」であることです。多くのメーカーの傾向として、商品・サービス名などでは必ず上位を獲得していますが、これは既に商品を知っている指名買いのユーザーへのリーチにしかなりません。この時、接点を持ちたい潜在顧客が調べそうな周辺キーワードのアイデア出しを行うことが重要です。例えば保湿に強いスキンケア商品を販売している会社であれば、「乾燥肌 化粧水」など、自社商品とマッチしそうで、新しい商品を探している方が検索する単語を連想するなどです。
その次はSEOライティングの知識を持ったライターを起用し、SEO対策記事をつくります。ここでのポイントは、検索した受け手の気持ちに立って、検索した人の答えになるような記事を丁寧につくることと、自社ならではのオリジナルのコンテンツを盛り込むことです。
このようにコツコツ記事を配信することで...