常識と考えられていることについて、実はそうではないと提言していく本連載。今回のテーマは「差別化」。差別化を目的にしてはいけない。よくある罠にはまらないように、著者が解説していく。
常識6 競合に対する差別化こそ戦略の要である
▷意味のない差別化はやめよう
▷競合を見るよりも消費者を見よう
▷本当に差別化が必要なのか
当たり前に受け入れられている常識を、一歩下がって疑うことで本質を炙り出す連載「その常識を疑おう」、第6回のテーマは「差別化」についてです。
差別化戦略はマイケル・ポーターが提案した「基本戦略」のひとつで、マーケティング領域の方々にも広く受け入れられている考えです。技術が成熟し製品のコモディティ化が進展していく流れにおいて、自社商品を他社とは違った存在にしていくべく、差別化に熱心なブランドは多いことでしょう。
もはやマーケティングの定跡ともなった差別化ですが、闇雲に差別化を図ってはいけません。そもそも、ほとんどのブランドには他者と比べて圧倒的に優れた特長なんて都合のいいものは存在しません。にもかかわらず、差別化をしないといけないという思い込みから、何かしら違いをつくろうと模索している方も多いことでしょう。実は、差別化には「意味のない差別化」という大きな罠があり、その罠の餌食になっているブランドもたくさん存在しています。
本稿では、巷にあふれかえる意味のない差別化の代表的なパターンを3つに分けて議論します。
①認識できない機能的な違い
ひとつめが、認識できない程度の違いを無理やり「差別化」としてしまうパターンです。もはや人間の目では判別ができないくらい画質が向上したスマートフォンのカメラ画素数の違いなどが好例です。技術者の立場で見ればものすごい進歩であっても、消費者にとっては何がどう違うのかよくわからない、というケースは、クライアントとの議論でもしばしば現れます(図1)。

図1 認識できない機能的な違い
この罠を回避するためには、その小さな違いに対して意味づけを行うことです。画素数の多少の違いに機能的な意味合いは弱かったとしても、「子どもを最高の画質で撮影できる」と変換するだけで、画素数の違いに新たな意味が付与されます。
この罠に当てはまる方は、まだ幸せかもしれません。だって、認識はされないかもしれないですが、機能的な違いを保有しているわけですから。ですから、機能的な違いを...