常識と考えられていることについて、実はそうではないと提言していく本連載。今回のテーマは販促物の「反応率」だ。反応率はそのまま販促効果と捉えてよいのか。どのように考えればいいのか、筆者が解説する。
常識2 反応率は販促効果を表す
▷施策の効果は増加分で測るべき
▷フェアな効果検証は、正しい比較から
▷正しい比較のために、十分な事前準備を
当たり前に受け入れられている常識を、一歩下がって疑うことで本質を炙り出す連載「その常識を疑おう」、第2回目のテーマはチラシやDMなどの「反応率」です。
チラシやDM、デジタル広告のように、企業側がリーチを正しく把握できる販促活動の場合において、効果を表す指標として広く使われるのが反応率です。反応率の算出はシンプルで、反応数÷リーチで計算されます。デジタル広告はCTRやCVRといった反応率を取得できますし、オフラインの活動では、反応数をきちんと計測するために、チラシ持参に特典を付けたり追加割引を提供したりするケースもよく見ます。
筆者が経営するホジョセンにも、「効果検証をしたが、実態としてわかっている反応率と一致しないので、この分析は間違っているはずだ。正しい分析をしたい」という相談がきます。その都度、その分析は案外正しいかもしれませんよ、とお伝えするのですが、この相談の根底には「反応率は広告効果を表した指標だ」という考えがありそうです。今回はこの常識を疑ってみましょう。
チラシへの反応は、純増ではない
あるスーパーが「世界きのこ物産展」の開催にあたり、チラシを1万枚配布、500人がチラシを持って来場、反応率は5%と、なかなか優秀な結果のようです。しかし残念ながら、この5%という反応率はチラシの効果を表しません。なぜなら、この5%の中には、チラシがなくても来場していた人も含むからです(図1)。一般に施策の効果は、その活動をすることによって得られた増加分を意味します。検証したい内容も、増加分の成果のはずです。
チラシの効果は追加で得られた来場者であって、チラシに反応した人の数や割合ではありません。同じ反応率5%であっても、チラシがなければ来店しなかった500人と、チラシがなくても来店した500人では、施策による増加という観点ではまったく異なる意味をもつことになります。お店の前で割引券チラシを配れば反応率はよいでしょうが、追加来店数にはほぼ影響しないですよね。
反応率がよいが純増に乏しいチラシを「効果のあるチラシ」と勘違いし続けてしまうと、チラシの作成・配布コストや割引オファーなどの費用だけがかさんでしまうことになりかねません。下手すると...