常識と考えられていることについて、実はそうではないと提言していく本連載。今回のテーマはビジネスにおける「成功事例」です。成功事例を信じてはいけない?その常識を疑います。
常識5 成功事例を集め、参考にしよう
▷成功には、個別の理由がある
▷成功要因を一般化する必要がある
▷成功事例は、自社の事例がベスト
当たり前に受け入れられている常識を、一歩下がって疑うことで本質を炙り出す連載、第5回目のテーマは「成功事例」です。
成功事例が好きな方は多いですよね。当社もよく提案の際に成功事例を求められるのですが、残念ながら守秘義務の関係でほとんど話すことができません。これは当社のサービスレベルを確認するための信頼根拠としての実績を知りたい、ということなので十分に理解はできるのですが、必ずしもそういうケースばかりではなく、自分たちの事業活動の参考にしたくて成功事例を集めている企業さんも多いようです。
世の中には様々な成功事例が共有されています。事例を知りたがる主な理由は、ビジネス課題をどのように解決まで持っていけばいいのかの道筋が見えてくると思っていることにあるようです。何をやっていいかわからないときや、どう考えていいかわからないときに、事例を虎の巻として参考にするという姿勢ですが、そこには大きな罠が潜んでいます。
成功には、条件がある
成功事例における「成功」を、問題を解決し企業価値を向上させたことと定義しておきます。BtoCの文脈においては、消費者の態度変容を促し、結果として売上や利益が増えることとします。成功が、消費者の態度や売上・利益の「変化」によって達成されることに注目しましょう。そして変化は事前と事後の差分によって観測されるわけです。
ここで重要なのは、成功が「事前」の状態を前提にしているということです。事業戦略、市場の環境、ブランドの状態、使うことのできる資源、実行体制、企業文化、などなど、様々な要因が成功のための前提に存在しています。
例えば、以前とある有名な食品ブランドがテレビCMを中止してWeb動画へ移行し成功した、というニュースが広く話題になりました。この「成功事例」の前提を考えることなく、同じ食品事業だからといって自社のキノコごはんのテレビCMを中止しWeb動画へと移行しても、うまくいかないかもしれません。
その有名ブランドは、有名だった。だからテレビCMをオンエアしなくても店頭を確保できるという条件があったかもしれません。もしくは...