常識と考えられていることについて、実はそうではないと提言していく本連載。今回のテーマは「ターゲットを絞る」だ。ターゲットを絞ることでどうやって売上を上げるのか。販促活動において有益な視点を、筆者が解説する。
常識4 ターゲットを絞ると売上が下がる?
▷ターゲットを絞ることは、2つの意味を持つ
▷市場を絞るのではなく、メッセージを絞ろう
▷市場全体におけるウケを最大化しよう
当たり前に受け入れられている常識を、一歩下がって疑うことで本質を炙り出す連載「その常識を疑おう」、第4回目のテーマは「ターゲットを絞る」です。
ターゲットを絞りましょう、というのはマーケティングの教科書でも冒頭に取り上げられることが多い言説ですが、同時に「ターゲットを絞ると売上が下がるんじゃないか」という懸念をお聞きすることもしばしば。なかなか組織を説得できないとお悩みの方も多いように思います。
この懸念の背景には、「ターゲットを絞る」ことが異なる2つの意味をもつことによる混乱に紐づきます。何気なく使っている「ターゲットを絞る」という表現ですが、そこにはまったく示唆の異なる2つの解釈があり、意識して区別しなければなりません。今回のコラムでは、当たり前のように使われている「ターゲットを絞る」という言説を、少し深掘りして考えてみたいと思います。
「ターゲットを絞る」の二面性
ターゲットを絞ると売上が下がるという懸念の背景には、「ターゲットとは狙う市場のことであり、ターゲット以外からの売上は発生しない」という考えがあります。例えば、双子用のベビーカーは、おおよそ双子を持つ人からしか売上は発生しないでしょう。
このように、ターゲットを絞ることで市場自体が制約を受け、小さくなってしまうケースは存在します。時にこれをニッチ戦略と呼ぶこともありますが、当然ながら1人用ベビーカー市場と比べると明らかに市場規模は小さくなりますし、売上の伸びしろも限定的となります。「ターゲットを絞ると売上が下がる」という懸念は一見妥当なようにも思えます。
ところが、多くの場合においてターゲットを絞ったとしても、双子用ベビーカーのように市場そのものにまで制約が及ぶことは稀です。ターゲットを絞ったとしても、市場は絞られていないことがほとんどなのです。例えばあるブランドしいたけを「出汁を取る」ことに特化して売り出したとします。このブランドしいたけは、出汁を取る目的以外では購入されないのでしょうか。おそらく...