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「新・習慣」への対応

コロナ禍で進化する「サービス」の在り方

松井 拓己(松井サービスコンサルティング)

来店者の行動に変化がある中で、店舗側が提案すべきサービスとは何か。スタッフのナレッジ・スキルをどのように活用すべきかを事例を踏まえて著者が解説する。

サービスの定義

人や構造物が発揮する機能で、顧客の事前期待に適合するものを“サービス”という

コロナ禍で消費者のライフスタイルやワークスタイル、日常の行動は大きく変わりました。特に「密」を避ける行動様式は、店舗型サービスにおいては顧客接点の減少を意味し、大きな打撃となっています。単に目の前の業績の悪化に留まらず、接点が「疎」であるがためにサービス価値や顧客との関係性が低下すれば、事業の将来性まで損ないかねません。今、まさに店舗型サービスの真価が問われています。

一方、コロナ禍で「疎」から「密」になっている領域もあります。例えば家族時間やアウトドア、オンラインやデリバリーサービスなど。店舗型サービスも、これらの変化にどう向き合うのかによって、その姿に変化が生じています。コロナ禍を単に耐えるのか、変化に対応して前向きに乗り切るのか、この危機感をチャンスと捉えてあえて進化に挑むのか、企業によってもスタンスの分かれるところです。

「サービス」の在り方を再考する

サービスの在り方や進化を考える前に、そもそもの「サービス」の定義をご存じでしょうか。サービスは目に見えないために、精神論や直観に頼りがちになるため、サービスの本質を理解しておくことが、進化の第一歩です。上記のサービスの定義をご覧ください。

つまり我々が提供することすべてが無条件に「サービス」と呼ばれるわけではなく、顧客の“事前期待”に合っていることだけが「サービス」だということです。裏を返せば、いくら良かれと思ってしたことでも、“事前期待”に合っていなければ、それはもはやサービスではなく、余計なお世話や無意味な行為、迷惑行為でしかないのです。

よって、我々がサービスを考えるとき、真っ先に明確にすべきは「何を提案すべきか」「何を開発すべきか」といった具体策ではなく、どういった“事前期待”に向けてサービスの価値を高めるべきかなのです。これを「事前期待の的」と呼びます。「事前期待の的」の設定次第で、サービスの姿や価値はガラリと変わります。

例えば日本サービス大賞を受賞したサービスに、オイシックスが展開するプレミアム時短献立キット「Kit Oisix(きっとおいしっくす)」があります。一般的に料理キットは10分〜15分で1品つくるものが多いのですが、これは20分で2品、野菜が豊富な料理がつくれるという内容です。これがコロナ禍でユーザーを大きく伸ばしているのです。その魅力は、事前期待の的をひも解けば分かります。

一般的な料理キットは「手間なく料理したい」という事前期待を的にしています。一方オイシックスは、「手間なく料理したい」という事前期待に応えるだけでは忙しい女性を応援できないのではと考え、「料理の手抜きに対する罪悪感」を的にして、ひと手間が価値になるサービスを組み立てたのです。このように事前期待の的の設定次第でサービスの形や価値はガラリと変わります。そしてコロナ禍における事前期待と合致したことで、大きな事業成果をあげたといえます。

実際に「これからのサービスの在り方」を考えるには、コロナ禍によって生じた変化を、事前期待の変化として再定義することが重要です。ライフスタイルやワークスタイルの変化、ニューノーマルとは、自社のサービスにおいて一体どのような事前期待の変化を意味するのでしょうか。これはコロナ禍に限ったことではありません。

例えば「高齢化だ」「シニアマーケットだ」と掲げたところで、いったい何を提案したらよいか分からない企業が多いのではと思います。高齢化やシニアマーケットとは、いったいどんな事前期待の変化を意味するのかを捉えることが重要です。「これからの事前期待の的」を見定めることができれば、これからのサービスの在り方は自ずと明確になるのです。

ただし、事前期待とひとことで言っても千差万別で...

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