レインズインターナショナルは、「牛角」「しゃぶしゃぶ温野菜」「かまどか」「土間土間」などの飲食店を経営し、「感動創造」を理念に国内から海外まで幅広くフランチャイズチェーンを展開している。料理人経験を持つ根本寿一社長が考える「現場力」とは。
—根本社長の食の原点とは。
私はそもそも外食が好きで、入社する前は料理人として和食のお店を経営していました。ことしで入社17年目になりますが、長年メニュー開発や食材管理など食に直接かかわる業務に携わってきました。入社前からいままでいろいろなかたちで食を突き詰めてきた経験と蓄積が、いまの私を作っていると感じます。
個人経営とフランチャイズ経営では、視点が大きく異なります。料理人時代は販促をあまり意識せず、その日に来てくれたお客さまを全力でもてなすことに精いっぱいでした。フランチャイズ経営では「このレタスのおいしさをどういう導線で伝えるか」というように、広く正しく効果的に伝える方法を考えなければなりません。
また、教育方法にも違いがあります。私が若い時は、料理やサービスを人から教えてもらうことはなく、背中を見て学ぶのが常識でした。レシピなんてなくて、親方から一子相伝で伝えられたものを受け継いで作っていく。もちろん教えてくれないから、夜こっそりソースの味をみて、家に帰ってから自分で作って練習して、そこで少しずつ書き留めたものがレシピになりました。
キッチンのフライパンに残っているソースを舐めて味を記憶するんですが、意地の悪いシェフは使い終わったらすぐに洗剤をかけちゃうので必死でしたね。
流動的な肌感と絶対的なデータ その両方から現状を把握する
―現場への教育方針としてはどのようにされていますか。
チェーン店でいまお話ししたことをやっても意味がないので、多くのスタッフが同じクオリティで料理を提供できるよう、徹底的にマニュアル化しています。手順書ひとつとっても、手順書を作るための基準書があり、基準書のためのマスターデータベースがあり……と緻密に設計されていて、入社当時の私にとっては大きな衝撃でした。
ただ、マニュアル至上主義でもいけないと思っています。現場は理屈だけでは動かないもので、その時の気温や湿度、雰囲気などによって感覚的に動く。言語化しにくく、抽象的ですが、それを否定してはならないというのが私の考えです。人の“第六感”というものは高度なアンテナで、そこから得られる勘はバカにできません。
それこそ「きょうは雨が降りそうだな」とか「なんだか雰囲気が悪いな」とか、店長がそうした感覚を持てるかどうかで、お店の良し悪しが大きく左右されます。そして、こうした感覚はお店側だけでなく、お客さまにもあるものです。私はよく店舗に足を運びますが、お店に入った瞬間に良い店か悪い店かすぐにわかります。
良い店は、スタッフが動き回っていてもまとまりがあり、一丸になっているのが感じられますが、悪い店はバラバラ ...