毎月のように新商品が誕生し、目まぐるしい動きを見せる炊飯器業界。そんなレッドオーシャンにあえて勝負を挑むのが、最高の香りと食感を実現するトースターを大ヒットさせたバルミューダだ。「素晴らしいごはん、最高の食事」をコンセプトにした新商品「BALMUDA The Gohan(バルミューダ・ザ・ゴハン)」は、30歳代~60歳代まで幅広く支持され、2017年1月の発売開始から品薄状態が続いている。
「心の奥にひそむ購買意欲を湧き上がらせるには、体験の提供が最も重要」。バルミューダの寺尾玄社長はこう語る。「BALMUDA The Gohan」は、おかずのおいしさを引き立てるごはんによって、食事を楽しくするという体験を世の中に提供する。同社のマーケティング部の半澤直子部長にヒットの背景を聞いた。
──「BALMUDA The Gohan」がヒットに至った要因は何ですか?。
「毎日の食事をおいしくするための炊飯器」と伝えるコミュニケーションを貫いたことが、功を奏したと思っています。具体的な数字はお伝えできないのですが、「ごはんは主役ではなく、おかずの相手。主役のおかずがピッチャーなら、ごはんはキャッチャーだ」ということを寺尾(玄社長)は言います。それは、炊飯器の広告にありがちな「ごはんの粒立ちを見せる絵」よりも、「おかず」を主役にしたビジュアルを多く用いたことにも表れています。その初志貫徹の姿勢が狙った層に届いたのではと考えています。
──「BALMUDA The Gohan」が誕生した背景を聞かせてください。
2015年に発売したトースターのヒットを受け、「パンの次はごはんだろう」と、さほど深く考えずに企画が立ち上がりました。社内で「みんな、ごはんはどうやって炊いている?」と話し合ってみると、炊飯器で炊く人もいれば、味を重視して土鍋で炊く、保温性の高い鍋で炊く人と多種多様。
炊飯器自体もさまざまな製品があり、盛り上がっているカテゴリーです。各社の炊飯器は「いかに土鍋のご飯に近づけるか」ということを熱心にコミュニケーションしている。まだまだ炊飯器のごはんには改善できる余地があるのでしょう。私たちは、「おいしいごはんを"作る"のではなく、おいしいごはんを"探そう"」というところからスタートしました。
それから開発部隊はいくつかの飲食店を回ってごはんを食べ歩き、そのなかで釜飯屋さんの羽釜で炊いたごはんに強くひかれたそうです。開発の人間が出した結論は、口に入ったときの香りや甘みよりも「食感」がごはんのおいしさにつながるということ。穀物本来のおいしさがごはんのなかに残っている状態こそ、一番食事をおいしくするはずだと考えたんです。
試作・試食を重ねた結果、蒸気の力で炊き上げるものが求める食感、ごはんのおいしさに近いという結論に至り、二重構造の釜で蒸気炊飯の状態をつくり出した「BALMUDA The Gohan」が誕生しました ...