フィリップ モリス インターナショナルの加熱式たばこ「IQOS(アイコス)」は2014年11月のテスト販売から2年間で、300万台を売り上げる大ヒットを収めている。「IQOS」を使用している成人喫煙者のうち100万人以上が紙巻たばこから「IQOS」へ完全に移行したようだ。たばこは一般的に、テレビやラジオ、Webでの広告が規制されている。また、交通・屋外広告でも同様だ※。こうした露出制限の中、「IQOS」はどのようにプロモーションを実施し、ヒットにつなげたのか。
「紙巻たばこのマイナス面を解決し、たばこ本来のおいしさを引き出す」とうたう「IQOS」は、その利点をどのようにして成人喫煙者に届けたのか。「加熱式たばこ」という新たなカテゴリーの認知拡大から始まったプロモーション手法を、フィリップ モリス ジャパン リデュース・リスク・プロダクツ・デバイス・ポートフォリオ・マネジャーの續木梢氏に聞いた。
―大ヒット商品となった「IQOS(アイコス)」ですが、現状どれくらいの支持を集めているのでしょうか。
成人喫煙者のうち、すでに多くの方々に「IQOS」をご愛用いただけています。紙巻たばこは0.5%のシェアを取れればヒットと言われますが、「IQOS」の市場シェアは全国で推定7.6%(2017年1月現在)ですので、従来にない数値だと思います。
日本の成人喫煙者は、およそ2000万人と言われています。男性が約1500万人、女性が約500万人です。「IQOS」は発売以来2年間で、そのうち200万人の方に愛用いただいています。紙巻たばこから完全に移行した成人喫煙者は、100万人ほどと推計されます。「IQOS」は、世界20カ国で展開をしている商品なのですが、他国は一部の都市だけで、全国展開しているのは、いまのところ日本のみです。日本での供給を優先している関係もあり、世界での展開はこれからと考えています。
―プロモーションのターゲットや目的は。
ターゲットは成人喫煙者のみで、基本的には、紙巻たばこから「IQOS」への切り替えを促すように訴求しています。また中には、「IQOS」と紙巻たばこを併用される方や、紙巻たばこに戻られる方もいらっしゃいます。ですので、一度体験された方には使い続けていただき、完全に移行してもらうことが目的になりますね。
―施策を進めていく上で、どんなことがハードルとなりましたか。
まず一般的に、たばこは、ほかの製品と比較しても厳しい規制があります。法律によるものだけでなく、たばこの業界団体が定める自主基準などもあります。たとえば、全世代が触れる可能性のあるテレビやラジオのほか、Webサイトでも年齢・喫煙者確認によるログイン制限をせずして製品広告は行えません。屋外広告看板や電車、バス、タクシーなど公共交通機関でも、基本的には製品広告を出せないのです。
つまり、限られたメディアを活用することになります。その上で「IQOS」ならではのむずかしさもありました。「加熱式たばこ」自体がこれまでにない新しいカテゴリーですので、その認知を成人喫煙者の間で広めねばならないということです。
そのためには、これまで紙巻たばこに慣れ親しんできた成人喫煙者の方々に、「加熱式たばこ」の味わいを知っていただくことが不可欠でした。そこで、厳選された最高品質のたばこ葉を使うことで、たばこ葉が持つ本来の味わいが十分に楽しめることをアピールしていきました ...