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経営トップ 販促発想の着眼点

ジュエリーの‟精神価値”市場を創出――サダマツ社長インタビュー

サダマツ

ユニークかつ効果的なプロモーションを展開する企業のトップに、どのような視点で販促を考え、展開しているのかを聞く。

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バブル期には3兆円あったジュエリー市場も、バブルの崩壊や消費者の価値観の変化などが原因で、最近は1兆円ほどにまで縮小した。その中でサダマツは、今の消費者がジュエリーに対して抱いている本質的なニーズを深く掘り下げて、従来からあるジュエリーの“お守り需要”とともに、ジュエリーマーケットの外にある“精神価値需要”をも取りにいく戦略を立てた。2012年に「Wish upon a star」を開発し、現在は同商品を主力にして、売上を伸ばしている。

サダマツ 代表取締役社長 貞松隆弥氏(さだまつ・たかや)
長崎県生まれ。成城大学を卒業後、メガネの専門店、和真に入社。1986年、サダマツ入社。営業本部長、専務取締役を経て、2000年に代表取締役社長に就任。

ジュエリー市場への“逆張り”進出でIPO果たす

サダマツは「festaria bijou SOPHIA (フェスタリア ビジュソフィア)」「Douxmiere bijou SOPHIA(ドゥミエール ビジュソフィア)」など6つのジュエリーブランドを持ち、全国に99店舗(メガネ店4店舗含む)を展開する。

主力のブランドはfestaria bijou SOPHIA。表参道ヒルズに直営店を置き、国内外の百貨店やアウトレットにおいて43店舗を運営する。同ブランドのコアターゲットは20代後半から30代。8800円から30万円までの商品を揃え、中心価格帯は3万5000円だ。

サダマツはもともと、現社長の祖父が長崎で時計の販売・修理業として創業した。その後、二代目が取り扱い商品をメガネに転換し、家業を継いだ三代目の現社長、代表取締役社長 貞松隆弥氏がジュエリー産業に進出した。貞松氏は、ジュエリー産業に事業のかじを切った理由を次のように話す。

「90年代のはじめ、メガネの市場規模は5000億円で、最大手1社が1000億円を占め、大手10社で半分の市場規模を持っていました。私は事業を引き継いだ当初からIPO(株式公開)を目指していましたが、こうした状況のメガネ市場で大きく成長することは難しいと思いました。その点、ジュエリー市場はバブル時期が3兆円の市場規模で、バブル崩壊後は1兆5000億円まで落ちていましたが、最大手企業の売上高は400億円で、小規模事業者が多い産業構造だということが分かり、ビジネスを展開することにしたのです」

市場が縮小し、撤退する事業者が多い中、あえて“逆張り”で参入。ジュエリーの小売を沖縄のイオン内で始めると、貞松氏の読みが当たり売上は右肩上がりで推移していき事業は拡大、当初の目標だったIPOを2002年に果たすことができた。その後も順調に売上を伸ばし、個人消費の低迷が続いていた中、2014年8月期の売上高は連結で82億1200万円に達した。

家族の愛の証しを世代を超え受け継いでいく宝石

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Wish upon a star
「ビジュ ド ファミーユ(=家族の宝石)」の想いが込められたダイヤモンド。高度なカット技術で、ダイヤの中にふたつの星を浮かび上がらせるデザインを実現させた。Wish upon a starはジュエリーの“精神価値需要”を作り出し、急拡大で売上を伸ばしている。

「Wish upon a star」という独自開発のダイヤモンドジュエリーだ。「夢を叶える、星のダイヤモンド」が、同商品のキャッチフレーズ。きらめくダイヤの中に、大小ふたつの星が浮かび上がっているオリジナルカットだ。小さな星は“今”の自分、大きな星は輝く“未来”の自分を表している。

この商品を開発した背景には「ビジュ ドファミーユ(=家族の宝石)」というヨーロッパに古くから伝わる習慣がある。宝石を祖母から母へ、そして娘へ、あるいは新しい花嫁へと、家族の愛の証しとして世代を超えて受け継いでいく習慣だ。「人の命は限りがあるが、想いは永遠に生きていく」という考え方から生まれた習慣だと言える。

「星をダイヤの中に浮かび上がらせたのは、地上最古のダイヤモンドは、地球が誕生する50億年前よりもはるか昔の60億年前であると言われていることを知ったのがきっかけでした。ダイヤモンドは宇宙空間を漂っている星ではないかと気づきました。夜空を彩る美しい星は夢を叶える力を持つと言われています。ダイヤモンドをもう一度“星”にかえすことができたら、きっとみんなの願いを叶えてくれる、そんな想いを込めて、失敗を重ねながらWish upon a starを開発しました」(貞松氏)

サダマツはこのWish upon a starで、ダイヤモンドの“精神価値市場”を獲得しにいった。「1980年代、ジュエリーのみならず、世の中の商品価値は“資産価値”にありました。90年代になると“ファッション価値”へと移り、2000年代なかばからは“精神価値”の時代になってきています。ジュエリーの精神価値市場でトップを取ろうと考えて開発したのがWish upon a starです」(貞松氏)

店頭での接客時、Wish upon a starに込められたビジュ ド ファミーユの想いを話すと、多くの来店客がその想いに共感し、他のダイヤモンドリングではなく、Wish upon a starを買い求めた。

貞松氏の狙いどおり …

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