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老舗旅館がIT駆使して40%直販集客、海外向けの「おもてなし」も

「龍名館を利用しているお客さますべてを大切に思うことと、社員が一丸となってその対応をすることを大事にしている」と語る、代表取締役社長の浜田敏男氏。

客室稼働率90%の宿泊主体型ホテルのサービス

ホテル業界が大きく変わろうとしている。東京五輪(2020年)の決定後、海外からの観光客は着実に増え始め、これから拍車がかかることが予想される。また、外資系ホテルの相次ぐ参入で過当競争に突入している地域もあり、めまぐるしく動いているのがこの業界である。そういう状況の中で、独自の経営視点を持ち、稼働率も高い宿泊施設を持つのが龍名館グループ。

和風旅館で創業したのが明治32年(1899年)という老舗企業で、東京・神田駿河台の和風旅館からスタートした龍名館は、旅館、ホテル、不動産経営といった事業を展開している。同社は系列企業として、「旅館龍名館本店」「ホテル龍名館東京」を持ち、系列店としてレストランの「花ごよみ六本木」「花ごよみ東京」「花ごよみ龍名館本店」を経営。不動産経営としては6箇所の賃貸ビルを所有している。

本拠地でもある「旅館龍名館本店」は全室和室、畳敷きで12室(30名収容)のこじんまりとした、中庭のある和風旅館である。3割が外国人客の利用で、朝食は和食のみ。都心では数少ないホテル形式の和風旅館というのが特徴だ。

ホテル龍名館東京

東京駅八重洲口から歩いて3分の好立地に建つ「ホテル龍名館東京」。すべての宿泊客にホテルからの夜景を見てもらうため、フロントを最上階に設けている。

もう一つの特徴が東京駅から歩いて3分の好立地に建つ「ホテル龍名館東京」。こちらは、グレードの高い客室や質の高いサービスを提供するホテルで価格は平均単価約1万5700円。135室の宿泊主体型ホテルで海外客の利用は4割。客室稼働率が90%以上という高さを保っている。売り上げで見ると、外国人比率は全体の34%(直販は30%)を維持している。

同ホテルは25カ月連続で売り上げが前年同月を上回っていることに加え、2009年6月の開業以来、東日本大震災の影響を受けた3~4カ月間を除くほぼ全期間で、売り上げ、稼働率、客室単価の前年同月を上回り続けている。

老舗企業にふさわしく、社訓は「人の和」、企業理念として「働く人たちが自慢でき、誇りを持てるビジネス」「自主・自立の店舗運営」「地域に根を張ったビジネス」の三つを掲げている。

同社は、老舗企業の持つ“おもてなしの精神”に加え、ウェブを駆使した販促にも強みを持つ。つまり、古いものと新しさが融合した会社なのである。

浜田敏男社長は「龍名館を利用しているお客さますべてを大切に思うことと、社員が一丸となってその対応をすることを大事にしています。『ホテル龍名館東京』のフロントは最上階に設けているのですが、これは宿泊なさるすべてのお客さまに東京を一望する景色を見ていただきたいという想いから実施しました」と話す。

「ウェブ活用」「ホテル内商品開発」「コラボ企画」が販促の柱

同社の販促戦略の三つの柱は「積極的なウェブ販促」「顧客ニーズに対応したホテル内の商品開発」「コラボ企画と連動する広報活動」である。

老舗の企業だからこそIT施策には積極的である。ホテル、旅館の集客策として積極的に行っているのがウェブサイトを中心とした各種施策。LINEビジネスアカウント「LINE@」も取得し、iPhone、Androidアプリも制作した。

経営企画・マーケティング部部長の濱田裕章氏は「SNSをはじめ、SEO対策など、できることをすべて挑戦しています。現在、集客で40%が直販ですが、できれば50%まで自社で営業できるようにしていきたい。年々、ウェブサイトに関しては充実を図っています」と話す。

例えば、ウェブサイトは各店舗ごとに立ち上げており、サイトをフロントスタッフで運営・管理できるようにしている。その狙いは日々変わる顧客ニーズを素早く把握し、すぐにサイトに反映させることだ。

次に、ホテル内の商品開発の充実だ。同社では、客室の種類によるブランディング戦略をとっている。ホテル龍名館東京は135室、12タイプに、定員173名収容の独特の宿泊主体型ホテルだ。中でも都市機能と融合した客室「フォーラス(FORUS)」を提案し、客室のブランディング化を行っている。例えば、「フォーラスCクリエイト」は2万3000円、「フォーラスBサクセス」は2万1000円、「フォーラスAディスカバリー」は1万9000円、「スタンダードシングル」は1万7000円とランク付けしている。

浜田敏男社長は「ホテルのブランディングはもちろんですが、客室自体に個性を持たせ、ほかのホテルとの差異化を打ち出しています。お客さまは自分の好み、感性で部屋を選びます。それに応えられるだけの特徴のある部屋を提供するというのが狙いです」と話す。

フォーラスの特徴の一つが、パナソニックの「睡眠環境システム」の導入。照明・音楽・体感振動により「質の良い眠り」を実現するシステムだ。例えば、照明は就寝前の照明制御と起床時の照明点灯。音楽はくつろぎと起床時の環境を演出する専用音楽で良質な睡眠・起床を実現している。

期間限定イベント、コラボ商品で価値を高める

販促の三本柱の一つが積極的なコラボ企画と、それと連動する広報活動だ。龍名館が他社と提携し、商品開発や期間限定イベントを実施するなど、「一緒につくる」という発想で展開している。

「他社と一緒に商品を作り上げることの価値は、当社にない価値をお客さまに提供できること。また、巻き込んでいく人が多ければ多いほど、当社の応援団が増えるイメージで、広報活動時も露出が見込める情報発信になるように目指しています」(濱田裕章氏)。

例えば、成功した期間イベントの一つが「梅酒BAR」。和歌山の酒造大手の中野BCとのコラボである。ホテル龍名館東京のレストラン「花ごよみ東京」で約2カ月間、梅酒ソムリエが選んだ21種類のカクテル梅酒を移動式ワゴンに載せて披露した(料金は2時間飲み放題で1500円)。ボジョレーヌーボーのように新酒の梅酒を楽しむ“梅酒ヌーボー”という企画イベントである。

また、“和のおもてなし”にこだわった付加価値商品を地域の老舗企業とコラボしたイベント・商品開発もある。一つは浴衣で、小倉染色図案工房の小倉充子氏に依頼。江戸っ子も好んだとされる鉄紺(深い青緑)色に染め上げた生地に、白抜きで、江戸の呉服橋を舞台とした町民文化や風情、旅人でにぎわう風景を、各文献を参考に描いた粋なデザインとした。ホテルの宿泊客の希望に応じて無料で貸し出し、ホテルフロントで土産用として6000円で販売している。

二つ目は日本橋の老舗和菓子店「榮太樓本舗」とのコラボ企画で、人気米菓「ピーセン」をホテルオリジナルパッケージに詰めている。榮太樓本舗がこうしたコラボレーション商品を手掛けるのは珍しく、近隣の老舗同士として協力し、東京駅前八重洲側の魅力を発信している。この菓子は全135室の客室に用意している。

さらに、相撲部屋とのコラボもある。それが、横綱 白鵬関の所属する宮城野部屋の全面協力による「ちゃんこ鍋」だ。花ごよみ東京店、六本木店にて、2014年3月31日までメニュー提供している。きっかけは白鵬関が名誉観光大使を務める北海道滝川市でみずから田植えし育てる「白鵬米」(品種:ななつぼし/特Aランク)を都内のレストランで唯一、龍名館が提供していたこと。白鵬米が雑炊として食べられるちゃんこ鍋として提供している。

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