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スタートアップが求めるデザイナー、デザインとは

高橋亮、鳥羽周作、山本健人

D4V デザイン・ディレクター 高橋亮さん、sio オーナーシェフ/シズる 代表取締役 鳥羽周作さん、カウンターワークス 取締役/CDO 山本健人さん。ベンチャーキャピタル、経営者、CDO とそれぞれ異なる立場からスタートアップに関わる3人にデザインについて話してもらった。

デザインの意味が大きく変化してきている

鳥羽:今は多くのデザイナーが課題解決に取り組んでいますが、そもそも課題を見つけられる人が少なくなってきています。だからデザイナーの役割が「課題を見つける能力」と「それを解決する能力」のセットになっていますよね。デザインの意味が大きく変わってきた。以前は経営者にデザインの話をすることはなく、広告業界やアーティストの世界の話でしたから。今回の僕ら3人も、仕組みをデザインする側ですし。

山本:事業会社がUIデザイナーやプロダクトデザイナーを募集するようになったのって、ここ7~8年ぐらいですよね。

鳥羽:そうですね。今はビジュアルをつくれるだけのデザイナーは、求められることが少なくなっている。僕はレストラン事業の会社「sio」と、博報堂ケトルと組んで飲食関連の商品開発、PR、戦略まで手がける「シズる」の2つの会社を経営していて、今はとある地域を食の力で復興させるプロジェクトに取り組んでいるんですね。この一連のパッケージは他の地域にも水平展開できるので、このビジネスモデルはもうデザインです。こういう大枠のデザインのほうが今は注目されているから、デザインの力を何に使っているか、ということが重要になっています。

高橋:僕はデザイン会社のIDEOとパートナーシップを組んでいるD4Vというベンチャーキャピタルで働いていて、投資先の会社をグロースさせるためにデザイン面からサポートをしていく仕事をしています。たとえばシード期のスタートアップでいうと、課題解決型のデザインを一番必要としていますね。

山本:何年か前だったら、スタートアップの創業期にはまずエンジニアを雇ったり、共同創業者にエンジニアが絶対必要だったりする一方で、本格的にデザイナーを探し始めるのはシリーズAくらいの資金調達後ということが多かったと思います。そのエンジニアがデザイナーに置き換わるような事例は生まれていますか?

高橋:デザイナーが早い段階から必要と考える起業家は増えていますが、その事例はまだ少ないかもしれません。どうしてもデザイナーとビジョンだけでは、プロダクトを世の中に出せないので。ただ、日本と海外のスタートアップを比較すると、デザイン人口は海外に比べて圧倒的に少ないです。課題を見つけてソリューションをつくれるデザイナーがあまりいないんですよ。でもニーズはあるので、D4Vではそういうデザイナーを育成するために「Startup First Designer Program」を実施しています。

鳥羽:総合力を持っているデザイナーは、まだ日本には少ないですか?

高橋:いるんですけれど、スタートアップで働きたい層は少ないですね。立ち上がったばかりのスタートアップは給与も限られるし、ストックオプションはあっても、すぐにはお金にならない現実がありますから。

山本:僕はフリーランスで10年ほどデザインの仕事をした後に制作会社を立ち上げ、売却、その後カウンターワークスに入社しました。その立場からスタートアップに入った理由を言うと、企業の新規事業では、リリース後のサポートが薄くなってしまうことが多い。結果的にどういう社会インパクトがあったのか、というところまでを併走しにくいと感じたんです。そこで、中長期的にプロダクトの成長に関わっていきたいと、元々クライアントとしてUIデザインを担当していたカウンターワークスに入りました。

鳥羽:スタートアップの創業期は、お金がかかるデザインの部分はどうしてもアウトソーシングして、単発での依頼になってしまいますよね。でも、長い目で見ると、そこは企業の根底に関わることだから、最後は内製化しているほうがよくて。でも、やっぱりなかなかできない。

高橋:そうなんですよね。最初のプロダクトづくりに最もデザインが重要になるんですけれど、その後のお金が増えてきてから皆注力し始めるんですよね。

D4Vが提供するスタートアップにおけるひとり目のデザイナーの育成に特化した「Startup First Designer Program」。

エアークローゼットの新規ユーザー獲得率を向上するデジタル体験のデザインを支援。

Ubieが提要するクリニック向け「AI問診 Ubie」のサービス導入までの体験のデザインを支援。

必要とされるのはどんなデザイナー?

山本:D4Vではデザイナーの採用のサポートもするんですか?

高橋:します。最初はどんなデザイナーを採用すればいいかわからないというスタートアップが多くて、ロゴもUI/UXも、何でもできるユニコーンデザイナーを求めるんです。でも、そんなデザイナーはいないし、いたとしても超高級な一流デザイナー。実際はフェーズによって必要なデザイナーは違うので、そこをサポートしていきます。

鳥羽:それは、凄いですね。

高橋:必要とされるデザイナーは3つに分けられると思っています。

最初の“つくるフェーズ”は、課題解決して、それに対してソリューションをつくれる、早いスピードで検証プロセスを回していけるデザイナー。2つ目は、プロダクトが完成してもユーザーに伝わらなかったら意味がないから、伝えるデザイナー。ブランドのロゴや、アイデンティティをつくるデザインもそうだし、言葉やグラフィックで誰に対して何を伝えるかを考えられるようなデザイナーですね。3つ目は、ある程度プロダクトが売れてきたら、それをグロースさせないといけないから、最適化・改善が得意なデザイナー。うちではそういう風に分けています。

山本:僕は何となく2種類あると思っていて、アートディレクターっぽいデザイナーと、あとはフルスタックっぽいデザイナー。前者のほうが事業や会社全体をどう見せていくかというブランドづくりをメインに関わるような人。広告会社のデザイナーにも多いかと思います。後者はスタートアップで一番重宝されるパターンで、絵も描けて、ユーザーヒアリングもできて、多少はプログラミングもできるタイプ。

鳥羽:シズるは博報堂ケトルと組むことで、そういう要素を会社に入れちゃったんです。クリエイティブはケトルが見て、副社長はリクルート出身でマーケティングもやっていたからマネタイズの仕組みのデザインができる。そこに力を入れているレストランの会社ってないんですよね。どこもシェフの資質によるところが大きいから、飲食ってすごく難しいなと思います。だから飲食業をコンサルしたら、とても重宝されるんじゃないかなと。

高橋:可能性がありそうですね。

鳥羽:単一のレストランだけの収益だとそもそも難しいんですよ。だから...

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