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CREATOR INTERVIEW

広告の未来をつくる明日のリーダー

広告の明日を支えるクリエイターたちをインタビュー。今月は、クリエイティブディレクター、コピーライター、CMプランナーとして活躍するグレイワールドワイドの多賀谷昌徳さんが登場する。

たがや・まさのり
クリエイティブディレクター、コピーライター、CMプランナー。ファブリーズ、レノアハピネス、プリングルズなどをP&G中心に担当。TCC最高新人賞、クリエイター・オブ・ザ・イヤー賞メダリスト、ACCゴールドほか、海外広告賞の受賞も多数。

ファブリーズの仕事が転機に

大学卒業後、コピーライターとして広告制作会社に入社。27歳になる年に、グレイワールドワイドへ。その過程で、グラフィックからラジオ、テレビへと徐々に活動の舞台を広げてきた。「テレビCMをつくるにはどうすればいいんだろう?とずっと考えていたんです。CMプランナーという職種が存在しない外資系の広告会社なら、グラフィック出身のコピーライターでもCMがつくれる。そう聞いて転職しました」。

元々、ミュージシャンを目指していたこともあったというほどの音楽好き、そして芝居好き、テレビドラマ好き。多賀谷さんの代表作になっているP&Gファブリーズの家族CMは、まさにこのバックグラウンドが結実したものだと言えるだろう。「グレイに入社して最初の数年間は、ファブリーズの中でもメインどころの商品はなかなか担当できなかったんです。でも10年前、ヤングカンヌでブロンズを獲ったのをきっかけにチャンスが巡ってきて、メイン商品のチームにコピーライター兼CMプランナーとして参加することになりました」。

そして生まれたのが、寺島進さんと坂井真紀さんが夫婦を演じる家族シリーズ。「劇的スッキリ。」というコピーのもと、ドラマ仕立てでニオイ問題と家族の感情を描き、ファブリーズを単なる消臭剤ではなく、大きな意味で"気持ちをスッキリさせるもの"に転換した。これを機にCMの好感度が一気に上昇。それまでの圏外からいきなり総合6位にランクインした。「クライアントも驚いていましたし、いろんな賞にノミネートされました。結果的に、TCCの新人賞もファブリーズのラジオCMで獲ることになったので、僕自身にとっても大きな転機になった仕事です」。

ラジオCM「スポーツカー」篇

SE: (スポーツカーの走行音)
♪: (スポーツカーのCMっぽいBGM)
: その走りは、本能を刺激し、忘れていた野生を呼び覚ます。12 気筒DOHCエンジン搭載。
子供: でもクサイよ。
: 今、先進の高性能が、加速する...
子供: でも変なニオイがするよ。
: ニオイは、すべてを台無しにする。
SL: 「♪クルマにはクルマのファブリーズ」

♪: (スポーツカーのCMっぽいBGM)
: 進化したのは、走りだけじゃない。強靭なボディ、革新的なフォルム。それは、見る者の目を奪う。
子供: でもクサイよ。
: 今、羨望のまなざしが向けられる...
子供: でも中はクサイよ。
: ニオイは、すべてを台無しにする。
SL: 「♪クルマにはクルマのファブリーズ」

01 P&G クルマ用ファブリーズ ラジオCM「スポーツカー」篇
2012年TCC最高新人賞を受賞した中の1篇。

02 P&G ファブリーズ テレビCM 劇的家族「開店」篇

いつだって現場にいたい

キャストが松岡修造さんに変わった第3弾シリーズでも、一貫して「生活共感」を重視している。「ごく普通の家族の"あるある"を描いています。急な来客で困った、寄り道がバレた、とか。たかがニオイのことであんなに盛り上がれる家族って、実は幸せなんです。主婦にとっても理想の家族の証拠。それが好感につながったんだと思います」。

現在の「ファブリーズで洗おう。」というコピーは国を超えて強い共感を呼んだ。「商品の価値を、洗いたいけど洗えない"ジレンマ"を解消する、と位置づけたんです。海外では"I wish I could wash"と訳されていますが、消臭はもちろん"本当は洗いたかった"という本質論が世界共通の主婦の強烈なインサイトだったんです」。この考え方は売上げに大きく貢献したことで、P&Gの米国本社からも注目され、2010年同社のベストキャンペーン部門最高賞を受賞。北米・ヨーロッパ・韓国など世界各国で同スキームで展開された。

P&Gで日本発のキャンペーンが世界に展開されるのは初めての快挙。だが、うかうかしてはいられない。逆に言えば、他の国のアイデアをアダプテーションする可能性だってあるということだ。

実績を買われ、多賀谷さんは約1年半前にクリエイティブディレクターに就任した。そして一番最近手がけたのが、ファブリーズの新商品「ファブリーズ スリープ」のCMだ。「アロマの香りで、世界を眠りにつかせる」というアイデアで、家々の灯りが消えていく様子を静かに描いた。「夜に使ってほしい商品なので、セリフ劇ではなく、トーン&マナーにこだわり、静かで高級感のある映像に仕上げています」。当初は「日本市場用のCMを提案してほしい」とP&Gアジアから制作依頼を受けたが、ビデオコンテ調査の結果が良かったことから、最終的に北米でも全く同じ映像が放映されることになった。

「最近は、普遍的な言葉を"ファブリーズのものにしよう"とよく考えています」。「ファブリーズで洗おう」なら「洗おう」、ファブリーズ スリープなら「目を閉じよう」といった言葉を広告コピーに使うことで、競合商品とシェアを奪い合うだけではなく、マーケット自体を拡大していきたいと言う。

CDになって以降、売上げで責任も果たさなければという思いが強くなった。だがその一方で、「常に現場に身を置く」ことにもこだわり続けている。名刺にあえて入れている「コピーライター、CMプランナー」という肩書は、その決意の表れだ。CDになっても高みの見物をせず、常に企画をしていたい。そんな現場へのこだわりと、CDとしての責任をどちらも手放すことなく、これからも多賀谷さんはヒットCMを生み続けるだろう。

03 P&G ファブリーズ テレビCM 熱血家族「ニオイ集合」篇



04 P&G ファブリーズ スリープ テレビCM「消灯」篇



http://www.greygroup.jp/

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