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今月のソーシャルプロジェクト

スマートな介護のデザインは、日常の暮らしも変えていく

介護とデザイン展

スマートな在宅介護を実現する

01 松屋銀座で開催された、デザインギャラリー1953企画展「介護とデザイン」展。©Nacása & Partners

02 「WAKAMARU」(三菱重工、2002年)。目のデザインは当時飼っていた紀州犬の顔がヒントに。角度によって表情を変える顔は、能面がヒントになっている。
03 「ROBOHELPER SASUKE」( マッスル、2012年)。人を抱きかかえるように持ち上げるシステムを開発。
04 「ROBOHELPER LOVE」(マッスル、2012年)。要介護者にカップを装着、センサーにより排泄物を判別して吸引・洗浄・除菌運転を自動的に行う。

「介護」はいまや私たちにとって非常に身近な問題だ。進む少子高齢化、介護の担い手不足、介護する側とされる側のコミュニケーション...。そんな問題に「デザイン」という切り口から解決のヒントを提示したのが、今年7月から約1カ月間、東京・松屋銀座で開催された「介護とデザイン展」だ。

展示ディレクターは、長年介護ロボットの開発を手がけてきた喜多俊之さん。喜多さんと言えば、カッシーナ「WINK CHAIR」やシャープ「AQUOS」などを手がけてきた、日本を代表する工業デザイナーの一人だ。

だが、喜多さんがこれまで介護ロボットの開発を手がけてきたことはあまり知られていない。

1作目は、2002年に三菱重工と開発したロボット「WAKAMARU」。音声や家族の顔を認識してコミュニケーションし、家庭の暮らしに寄りそうロボットだ。2作目は移乗システム「ROBOHELPER SASUKE」。これまでよりもずっと小さな力で人をベッドや車いすに移せるシステムを実現した。そして、自動排泄処理装置「ROBOHELPER LOVE」は、排泄の吸引・洗浄・除菌を自動化し、排泄介護の辛さを軽減する。「介護とデザイン展」には、この3作が展示されている。

「これらはすべて暮らしのデザイン、暮らしの道具なんです」と喜多さんは言う。炊飯器や掃除機のように、今後介護機器は家庭でごく日常で使われるものになるだろう。そのあり方がスマートになれば、住まいのあり方や家族のコミュニケーションも変わっていく。介護はする側もされる側も負担が大きいからこそ、少しでもデザインによってやわらげたいと考える。

また、介護機器は次の日本の大きな産業にもなりえる。高齢化社会の先進国である日本が、技術とデザインの力で世界に先んじてこの問題を乗りこえれば、高齢化が進む世界のマーケットから引く手あまたの存在になるはずだ。

3作品からなるシンプルな展示。だが、ポジティブな未来を私たちに予感させるのに十分な力を持っている。

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