自分の意見だけを通すのではなく、皆の意見をまとめ上げることが、CMディレクターの仕事の面白さだと栗原康さんは話す。その面白さを象徴するのが、キャスティングの場面だという。
皆で1本の鍵をつくる
ディレクターの栗原康さんはキャスティングを「皆でひとつの鍵をつくって、トビラを開ける作業」だと例える。
まずは栗原さんがコンテを描き、コンセプトを設定し、自分なりの鍵のかたちをつくる。そこに「こうしたい」「もっとこうしたほうがいい」という他スタッフの意見やクライアントの意向が加わり、鍵の先端部分がデゴボコしていく。そしてつくられた鍵で、うまくいけばトビラが開き、いいCMに仕上がる。
ジョージア「おきろ、夢」キャンペーンは、自分の思いを言葉にはできないけど、全力で行動することで何かを表現する人たちが登場するCM。「言葉にできない人たちだから、無口で暗いトーンで演じる人たちを」という栗原さんの考えに、「夢に向かう前向きな印象も加えたい」というクライアントの考えが加わり、言葉がない中でも、力強さが感じられるキャスティングとなった。「必ずしも自分の思いだけが反映されるわけじゃない。いろんな人の意見が集約され、結果として何かそのチームらしいものができ上がる。その工程がCMならではの面白さだと思います」。
- 企画制作/電通+ホンシツ+ピクト
- CD /足達則史〇CD + CMP + C /斉藤賢司
- CM プランナー/秋永寛
- PR /上原収三、古賀英朗
- PM /永吉竜也、足立朋洋、堀口修、上野幹人
- 演出/栗原康
- 撮影/浅川英郎
日本コカ・コーラ/ジョージア「おきろ、夢」篇
リアリティあるものに昇華させる
そうしてキャストが決まる中でディレクターが最低限果たさなければならないのは、たとえどんな人が来ても、広告としてのリアリティを担保することだと栗原さん。
例えばキリンビバレッジ にっぽん米茶のCMでは、出演している佐藤浩市さんとコロ助の再開シーンについて、あえて「十数年ぶりに再会した2人」という設定をキャストには伝えず、ただ「万感の思い」を喜びで表現して欲しいとディレクションした。「僕はコンテを描くとき、人物や状況の設定を考えるより、手を動かしながら各シーンのイメージが浮かんでくるんです。だから設定よりも、『シーンとしてどんな画であるべきか』を重視し、リアリティを作りだします」。
関係者の思いをひとつにまとめあげ、それを広告としてリアルなものへと昇華させる。それが、栗原さんの考えるディレクターとして理想のあり方だ。
- 企画制作/電通+東北新社
- SCD /伊藤浩之
- CD /後藤由里子
- 企画 + AD/小島洋介
- 企画/町田聖ニ
- C /馬場俊輔
- AgPR /北澤太朗、星野英伸、大隅幹史
- PR /島口茂樹、河西正勝
- PM /伊藤隆
- 演出/栗原康
- 撮影/市橋織江日本コカ・コーラ/ジョージア「おきろ、夢」篇
- 企画制作/電通+ホンシツ+ピクト
- CD /足達則史
- CD + CMP + C /斉藤賢司
- CM プランナー/秋永寛
- PR /上原収三、古賀英朗
- PM /永吉竜也、足立朋洋、堀口修、上野幹人
- 演出/栗原康
- 撮影/浅川英郎
キリンビバレッジ/にっぽん米茶「にっぽん米茶ナリ」篇

栗原 康
くりはら・やすし
オムニバスジャパン編集部、モーニング制作部を経て演出に。 2011年にダイスに参加。 最近の仕事はアフラック、ジョージア、シャープ、キリン、トヨタなど。