インターネットの速度で物事が動いている現代、今年2月1日に行なわれた第49回スーパーボウルはすでに歴史のひとつとして消えつつある。それに匹敵する次なるイベントを待つムードの人は多いだろう。だが、広告主や広告会社、プロダクションやCMディレクターなどにとってはある意味、これからが勝負だ。450万ドルという大金を払って流したCMの評価、ROIといった結果を調べるポスト・スーパーボウル活動が開始されているからだ。
01 ほんの数年前まで、P&Gの広告といえば、2WinK(Tow women in Kitchen)と呼ばれる駄作ばかりだったが、いま、P&Gはクリエイティブの代表選手となった。「Like a Girl」もその一つ。大きな社会問題を、一見地味な映像で巧みに表現している。カンヌの“ライオン・グラス賞” 受賞の呼び声が高い。
CM放送前・後のバズ
スーパーボウルCMに関するバズ(口コミ)は、放送終了後、約2週間続くと言われている。その間に、ソーシャルメディア、Twitterやブログ、ニュースなどに何度、どのような形でブランドが姿を見せたかを知ることで、スーパーボウル視聴者のブランドに関する考え方、感じ方を知ることができる。例えば、ソーシャルメディア・リサーチ会社ネットワークド・インサイトは、毎年、スーパーボウル中継前の2週間と、放送後の2週間、ソーシャルメディア上で消費者がCMの中のブランドに対する表現をどのように変えているかを調査。スーパーボウルCMの効果を測定している。また、こういった調査会社だけでなく、Facebook、YouTube、Twitter、Huluなども、独自でスーパーボウルCMの効果を測定している。
こうした調査では、最初は強い期待とポジティブな反応が見られていたにも関わらず、放送後は次第にネガティブになっていく、もしくバズが消えていくといったブランドもあれば、放送と同時に、ソーシャルメディアに共感を示すポジティブなコメントが集中するブランドもある。「それがユーモアであれ、幸福感や愛、または信頼感であれ、消費者の感情に訴えるものであることが必須」と、ネットワークド・インサイトの副社長リック・ミラーは言う。
オールウェイズの「Like a Girl」
ゲーム中継前後でバズの数が大きく変わったものは、P&Gの女性用生理用品オールウェイズのCMである。このCMをゲーム放送前に注目していた視聴者はほとんどいなかった。スーパーボウルCMに多い、ぜいたくさも、華やかさもないCMだったからだ。
ナレーターが若い女性に言う。「女の子のように走って下さい」。女性は内股で、手を小鳥の羽根のように振りながら走る。同じことを言われた青年は、手をばたばたと振りながら走る。「少女のように投げてごらん」と言われた少年は投げようとして、「投げられないよぅ」と戸惑う。「君はいま、女の子を侮辱した、と思わないかい?」とナレーター。少年はちょっと赤くなり、「ううん、いや、そうかな。でも僕の妹は別だよ」。
ナレーターが、今度は小さな少女に聞く。「女の子のように走ってごらん」。少女は一生懸命に走る。「女の子のように投げてごらん」。少女が野球選手のように力一杯投げる。ナレーターが聞く。「女の子のように走るって、どういう意味だと思う?」。しばらく考えた少女が言う。「出来る限り、一生懸命に走ること」。
このCMは、視聴者の琴線に振れ ...