優秀なマーケティング人材とは、どのような能力を持っているのか。そしてどのように育成していくべきなのか。デザイナーからキャリアをスタートし、様々な業種の企業でブランディング・マーケティングに携わる平松葉月氏と、新卒で入社したロート製薬で28年間キャリアを重ねてきた角田康之氏。マーケターのスキルや働き方をテーマに対談した。
事業変革期の企業から見た、マーケティングの価値
優秀なマーケティング人材の定義とキャリアアップを考える

青山商事
リブランディング推進室長
キャントウェイト 代表取締役
平松葉月氏左)
ロート製薬
マーケティング&コミュニケーション部
部長
角田康之氏(右)
マーケティングは「人々を幸せにする」行為全般を指す
「マーケター」という役割が専門職として認知されるようになった昨今。一方で日本企業はジョブローテーションの仕組みが主流であり、プロフェッショナル育成とは相容れない部分もある。そんな中で、長年マーケティングを生業としてキャリアを築きあげてきた2人に、個人としてのキャリアの積み重ね方と、企業としていかにマーケティング人材を育成すべきかを聞いた。平松氏は、ラウンドワン、アクア、幸楽苑ホールディングスとあらゆる業界を経て、現在青山商事のリブランディング推進室長を務めるとともに、2023年8月にコンサルティング会社キャントウェイトを設立した。
しかし平松氏は「自分をマーケターと思ったことはない」と語る。「グラフィックデザイナーからキャリアをスタートして、より経営に関わる根幹の部分に触れたいと思う中で、徐々にマーケティングやブランディングの世界に関わっていきました。そのため、何かのタイミングで“マーケターになりたい”と思ったことはありません。効果的に変革を起こすために、必要に迫られて上流へと行くうちにキャリアが紡がれていった感じです」(平松氏)。ロート製薬のマーケティング&コミュニケーション部部長を務める角田康之氏も、平松氏と同様に「マーケターという意識はない」と述べる。
もともとは教育学部出身であり、マーケティングに対して興味を持っていたわけではなかったという。同氏は営業職のスタッフ部門でキャリアを重ねる中で売上予算を作成する仕事に就き、実務の中でマーケティングの楽しさを感じていった。「私は『世の中の人々を幸せにする行為は全てマーケティングだ』と考えるようになりました。ロート製薬は『どうしたら人々の笑顔をつくれるか』を探求している企業であり、そこの親和性は非常に高いですね」(角田氏)。