エネルギー業界は、日本の人口減少というメガトレンドに加え、2016年電力小売全面自由化、2017年ガス小売全面自由化という大きなビジネス環境変化にさらされている。東邦ガスが立ち上げたのは、飲食店支援のサブスクリプションサービス「1ドリンクサブスク」。ビジネス環境の変化に合わせた新規事業の展開について、これまでの試行錯誤、今後の展望を聞いた。
新規事業開発とマーケティング
異色の新規事業 社会の変化を捉えた東邦ガスのWEBサービスとは

東邦ガス
事業開発部事業開発第2グループ
課長
臼井健二氏
OEMで全国にサービスを拡大中
東邦ガスが展開する事業ブランド「1ドリンクサブスク」は、月額550円(税込)を支払った上で1100円以上の飲食をすると、加盟店にて一日一杯660円以下のドリンクが無料提供されるというサブスクリプションサービスだ。
現在全国で約2200店舗以上の加盟店を有し、利用者もますます増えつつある同サービス。「日本サブスクリプション大賞2022」ではBtoC部門の特別賞を受賞し、地域振興の観点でも高い評価を得ている。インフラ企業がなぜ、ドリンクのサブスクサービスを開始したのか。事業開発部の臼井健二氏は、「コロナ禍で飲み会需要が激減する中、『お酒を通したコミュニケーションによって生まれる活力を信じて、日本にもっと乾杯の機会を増やしたい』という思いがあって立ち上げました」と語る。サービスの前身となるのが、2020年10月に東海エリアを中心にスタートした「フラノミスタ」だ。
その後2021年12月に東京ガス「よりみちパスポート」にOEM展開し、翌2022年、同社は統合ブランドとして「1ドリンクサブスク」をリリース。その後、金沢エナジー「NomTok」、北陸電力「のむリンク」、四国ガス「ノミヨル」と、OEM展開をすることで利用範囲を拡大している。この広がりの秘訣は、「徹底したサービス内容のシェイプアップ」にある。まず、1ドリンクサブスクの料金設定は「生ビール一杯ぶんの平均価格」が基準。
「月に一度でも利用すれば元が取れる」という、ユーザーにとって理解しやすいものになっている。加えて、サービスの利用条件も「1100円以上飲食を条件にクーポン画面を提示する」だけとシンプル。アプリ上の情報は主に「近隣の加盟店名と地図情報」に絞られており、写真もメニューも表示されない。