CRMの重要性が増す中で、お客さまに自社ブランドのファンになってもらい、「お客様と共に持続的に成長していく関係値づくり」へ注目が高まっている。ファンと共に創り上げるイベントを通じた球場観戦体験の価値の向上に取り組んでいる福岡ソフトバンクホークスの白川隆志氏に、ファンを深く知る方法や、ファンの期待の一歩先にある価値づくりのポイントについて聞いた。
ファンに愛されるコミュニケーションのあり方とは?
ファンの期待の一歩先を行く、価値の創り方
―毎年満足度を上げ続ける、ホークスのファンマーケティングとは

福岡ソフトバンクホークス
取締役 執行役員
白川隆志氏
ファンのすそ野を広げるため、各種接点でリサーチを実施
2023年に球団創設85周年、ドーム開業30周年を迎えた福岡ソフトバンクホークス。同球団スローガンは「めざせ世界一」。「持続的にブランド価値を上げ続けるには、ファンにとっての感動体験を創出し続けることが必要です。
そしてその感動を生み出すのは、“想定している期待値を上回る”こと。魅力的な体験価値を提供することを目標に、あらゆるコミュニケーションを行っています」(白川氏)。会員数は有料・無料合計で71万人、Xフォロワー数は110万人といずれもパ・リーグではNo.1。特に2023年はTikTokフォロワー数を前年比227%と大きく伸ばし、12万人にまで達した。
来場者アンケートやブランド調査に加え、2023年は毎月の市場調査やチケット購入時のアンケートを新たに取り入れ、顧客行動の各接点でのリサーチを強化。Web広告やメール配信、アプリでの通知・バナーなど、属性・関心・行動に合わせた情報発信に注力した。こうしてデジタルマーケティングを強化していくなか、特に重視するのは、ファンのすそ野を広げていくことだと白川氏は話す。「2022年に行った市場調査によると、福岡県の生産人口は約300万人。
調査では、そのうち球場に来場している人は約60万人と見込んでいます。以前は観戦に来ていたが今は来ていない離反層が県内全体の44%。認知はしているが来たことがない認知未購買層が30%。未認知層が5.8%。この、残りの240万人にいかにアプローチするかが、課題として明確になりました。そこで私たちは改めて顧客ペルソナを分類し、既存顧客は『全力でエンタメを楽しむ層』、新規顧客を『仲の良い人と積極的にレジャーを楽しむ層』と定めました。併せて様々なデータと共に、イベントやプロモーション施策を検討することにしたのです。