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失敗しないメーカーのサブスクモデル開発

人々の「習慣」を考慮した、サブスクモデル設計のポイントとは?

太宰 潮氏(福岡大学)

企業にとって、安定的な売上を立てられることにメリットがあるサブスクリプションモデル。継続してサービスを提供し続けるためには、どのような価格戦略が必要なのか。消費者行動論やプライシングを専門とする、福岡大学の太宰潮准教授が解説する。

人々は「初回無料」に慣れている それを想定した上でのサービスを

現在、サブスクは様々な分野に拡大しており、形のある財でも耐久消費財、高価格帯商品、日配の食品などにまでサービスや商品の提供が広がっています。一方で採算が取れずにサービスを中断した例もみられ、その価値をどう捉え、価格を含めた戦略をどう立てるかが非常に重要になってきています。本稿では近年の研究からわかっていることや留意点を、顧客の行動順に、利用の開始時、利用時、支払時、退会時という順番でお伝えし、最後に研究の世界を少しだけご紹介します。

まず、サブスクの利用開始時です。サブスクではよく「初月無料」「初回無料/割引」といった体験期間や開始時のインセンティブを経て、本契約をスタートさせる例がよくあります。ここでまず認識すべきは、現在は多くのサービスにおいて、「そのサービスを現在使っている人」よりも「そのサービスを解約したことがある人」の方がずっと多くなっているという事実です。

事業者の方々は熟慮されると思いますが、社会がもう初月・初回無料などに慣れているため、ある程度無料で使われることなどもそれなりに想定してはじめの体験サービスを考えましょう。

次にサービスタイプの違いについてです。基本的にはどのようなサブスクでも「利用が少ないと(コスパなどが)不満になって退会」するので、最低限継続してもらわないと投資回収はできません。しかし「とても満足」する方は、サービスのタイプによって特性が変わります。オンライン英会話を考えてみると、英語を話す時間は、多ければ多いほど良いでしょう。

しかし、動画をものすごい時間見ることを考えるとどうでしょう。もちろん満足はある程度高まるのかもしれませんが、ダラダラ見過ぎてしまった、というようなどこか負の感触も出てきてしまうからか、非常に多過ぎる時間を見ても満足が高まらないという現象が起こります。多くのユーザーは基本的には利用の頻度が高まればよいのですが、より高い満足を考える場合は、サービスタイプによって、利用頻度が高い=満足とはならないケースがあると知っているとよいでしょう。

次もサービス利用時についてです。それは、サブスクになる以前、もしくはサブスクではない状態だったとしたら、どの程度の頻度・タイミングで使われていた/いるか、という顧客の習慣です。動画配信を考えると、数十年前から我々はアニメやドラマなど、「週次のコンテンツ視聴」に慣れています。先の英会話でも、対面の英会話学校に通うことを考えると、週1回、というケースは少なくないはずです。

人が物事を判断するときに...

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