広告活動においてもデータドリブンな意思決定が求められる今、データの有効な利活用がDXの鍵を握るといえる。デジタル広告の効果に関するデータをリアルタイムで一元管理できるダッシュボードを導入し、広告活動のDXを推進するネスレ日本で、メディアスペシャリストとして活躍する小堺吉樹氏が考える、これからの広告活動の在り方とは?
keyword 1 » DX(実践:マーケティング活動のDX)
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは、企業がデータとデジタル技術を活用して、商品やサービス、ビジネスモデルを変化させることで、業務そのものや、組織、企業文化を変革し、競争力を高めること。それにより、「顧客価値の最大化」を目指し、企業における普遍的な活動を、デジタル技術を使って実現すること。
Case Study 1 » ネスレ日本
デジタル化する広告媒体の裏側 活用できない企業の現状
従来、広告効果の測定は難しいとされてきたが、広告メディアのデジタル化に伴い、測定可能な領域が増えている。企業の宣伝担当者はデータを適切に収集し、データに基づく広告投資の最適化を実現することが求められている。
ネスレ日本でペイドメディアへの広告出稿プランニングを担当する小堺吉樹氏は、企業が行う広告施策において、広告効果を測定し、次のアクションにつなげる際、直面しやすい課題には「情報」と「時間」の2つが関係していると話す。
「情報」における課題とは、膨大な情報量を把握することの難しさにある。小堺氏は「出稿した広告の効果という『情報』については、月に1度、広告会社から定例発行される媒体レポートから得ていました。企業は複数のメディアに同時平行で広告を出稿しており、そこから得られるデータは膨大になるため、自社ですべてのパフォーマンス『情報』を把握することは難しい」と話す。
そして、小堺氏がもうひとつの課題として挙げる「時間」とは、PDCAを回すのに要する「時間」を指す。先述した月に1度のレポートを見て、次の広告出稿をプランニングしていては、刻一刻と変化する環境に合わせた広告が打てないことが課題だったという。
このように、広告媒体のデジタルシフトや効果の可視化は進んでいるが、実はこのデジタル化の恩恵を十分に生かしきれていないと小堺氏は考えていたのだ。
こうした課題を解決するため、ネスレ日本は2016年から、DX推進施策として、広告効果データをリアルタイムで見ることができるデータ分析ツールの導入を開始。複数のメディアを横断して広告を出稿していたとしても、データをひとつのダッシュボードで一元管理することができる環境を整備した。広告会社からのレポートを待たずとも、その時々の結果を見ながら、次のアクションを実行し、高速でPDCAを回すことが可能になったという。
この環境整備が役立った事例として、小堺氏は自社の看板商品である「キットカット」のプレミアムレンジ、「キットカット ショコラトリー」のキャンペーンを挙げた。
「このブランドでは毎年...