消費者が国境を越えて世界中の商品・サービスを購入できる時代、グローバル企業ではどのような取り組みを行っているのでしょうか。オランダ・アムステルダムから連載でお届けします。
膨大なデータの中、指針となるカスタマージャーニー
いまや世界のビジネスはGAFAと称される大手プラットフォーマーに牛耳られているといっても過言ではありません。なぜ、GAFAはわずかな期間で、世界トップ企業に登りつめることができたのでしょうか。それは、GAFAがつくり上げたのがプラットフォームであり、そこには登録者の購買情報が詳細に蓄積されているからです。データがあれば、その分析により、一人ひとりの消費者に最適な購買体験を提供することができます。データこそが、今日のマーケティングの要であり、富の源泉と言えます。
メーカーのマーケティング担当者にとって最も身近なデータ活用は、コミュニケーションプランの策定ではないでしょうか。膨大なデータの中で本来のコミュニケーションの目的を見失わないために、私たちはカスタマージャーニーの考え方を今日でも大切にしています。「トリガー」「初期検討」「積極検討」「購入」「購入後」「ファン化・維持」の6段階にジャーニーを分け、それぞれの段階において消費者のバリアとなるものをデータから抽出することで、各フェーズで成し遂げたいことを明確にしていきます【図表1】。
具体的にバリアとはどのようなものか、事例をもとに解説していきます。例えばシェーバーには回転式と往復式の2つのシステムがあり形状も異なります。フィリップスのシェーバーは回転式ですが、このシステムは日本ではまだあまりよく知られていません。そのため、これまで使っていたシェーバーと形が異なり、検討の対象に入らない、というバリアがありました。
そこで、トリガーフェーズでは、シェーバーこそが肌荒れや赤みの原因であることに気づいてもらい、回転式シェーバーを新たな選択肢として視野に入れてもらうことを目標にしました。このインサイトは、回転式シェーバーの認知が低い日本市場特有のものです。消費者調査のデータから現在、往復式シェーバーを使っていて肌荒れや赤みに悩む男性は、それが回転式のシェーバーで解決できることに気づいていないことがわかったのです。
消費者インサイトをまずはカスタマージャーニーに落とし込むことで、各フェーズにおけるコミュニケーションの目的が明確になります。世界展開をしている企業においては、他のマーケットで成功しているキャンペーンをそのまま流用することも多いと思いますが、それが必ずしも成功するとは限りません。全世界統一のキャンペーンを展開したい本社と、ローカルチームで意見が割れることもあるでしょう。そんな時...