消費者が国境を越えて世界中の商品・サービスを購入できる時代、グローバル企業ではどのような取り組みを行っているのでしょうか。オランダ・アムステルダムから連載でお届けします。
続く統合による規模拡大 小売大競争時代を生き抜く
ここ10年で起きた小売環境の変化は本当に目まぐるしいものです。消費者は家の近くの小売店に並ぶ限られた選択肢からだけでなく、オンライン・オフラインを自由に行き来しながら、世界中の商品ポートフォリオからモノを選択できるようになりました。近年では、小売店に行かなくとも、SNS上で購入まで完結させてしまうケースも珍しくありません。
電気シェーバーの業界においてもその傾向は変わりません。電気シェーバーのオンライン市場は過去10年にわたり、その規模を拡大し、2019年にはとうとうオフライン市場の売上を抜くところまで成長しました。
電気シェーバーの販売は、現在でも家電量販店が主です。家電量販店というと、接客販売のイメージが強いですが、昨今では自社でオンライン店舗を構えている場合がほとんどです。家電量販店におけるオンラインでの販売比率は年々上昇傾向にあり、その店舗間の競争は激化しています。
簡単に世界中のモノを検索・購入できる時代、オンライン・オフラインを超えた魅力的な購入体験を提供すべく、オンライン・オフラインの括りを超えて小売店の統合は世界規模で進んでいます。WalmartによるFlipkartの買収、Tmallの実店舗誕生など、オンとオフの融合はこれから、ますます進んでいくでしょう。
この小売業の大競争時代において、メーカーはどのようにカスタマー戦略を考えるべきなのでしょうか?私が考える解は、戦略的パートナーを見極め、投資の選択・集中を図ること、そしてDtoC比率を高めメーカーとしても魅力的な購買体験を提供することです。
戦略的パートナーへの投資の選択と集中
メーカーにとって、小売業者の急成長と統合は、少数の大口顧客への依存度の高まりを意味します。フィリップスの電気シェーバー販売において、上位10位の小売業者の販売比率は2012年には27%にすぎませんでした。それが2020年には5割を超えると予想されています。これはシェーバー製品全体においての数字ですが、重点製品についてはすでに販売の8割を上位13位までの顧客が占めるところまで、小売の統合が進んでいます(図表1)。