テクノロジーの進化により、デジタル上で行える施策が広がっている。デジタルマーケティングによって、パーチェスファネルの考えはどのように変わっているのか。トランスコスモス・アナリティクスの北出大蔵氏が解説する。
購入後の顧客体験が新規獲得に影響を及ぼす時代に
スマホやSNSの登場は、消費者と企業のコミュニケーションを大きく変容させました。従来のマスコミュニケーションは、AIDMA等の購入前ファネル(図表1上部の▽)に焦点を当てた潜在顧客を獲得するための手法でした。しかし、SNS上の口コミの影響力が増したことで、既存顧客をリピーターやファンに育成するための購入後ファネル(図表1下部の△)に焦点を当てたコミュニケーションの重要性が高まりました。
図表1は当社の自主調査結果です。既存顧客の良いコミュニケーション体験を共有・拡散することで、新規顧客の購入意向・利用頻度・リピート率・推奨行動を底上げするプラス効果を生み出せることがわかります。逆に、悪い体験は良い体験を上回るマイナス効果を生んでしまいます。
また同調査によると、企業に不満を抱いた消費者の約6割が店舗やコールセンターに不満を直接伝えてきます。その対応に満足できれば8割以上がリピーター化しますが、不満をもたれるとリピート率は2割以下になります。一方、不満を直接表明しない層のうち6割以上は、自分の不満体験を他人に拡散し、新規獲得に無視できない悪影響を及ぼすことがわかっています。
近年、サブスクリプションのように「買ってから体験する」のではなく「使ってから買う」タイプの商品・サービスが増えています。そのようなビジネスモデルでは、既存顧客の体験が新規顧客の消費行動に及ぼすインパクト(ダブルファネル効果)を重視した統合コミュニケーションがますます重要になります …