FacebookやGoogleが主導してきた個人データによるデジタル広告のパーソナライゼーションは、今後どのような変遷を辿るのか。デジタルエージェンシー FICCの代表取締役、VMLの日本代表を務める荻野英希氏にデジタルマーケティングの展望について聞きました。
「GDPR」施行の狙いは"データ活用"の民主化
従来のデジタルマーケティング領域では、「人」を基点にした考え方が拡大してきました。影響範囲がデジタルに留まらないFacebookなどのプラットフォームも、この「人」を基点にした仕組みであり、現在もなお、日本では人を基点にしたデジタルマーケティングの浸透を図り、投資をし続けています。
しかし、はっきり言えば、この考え方はすでに時代遅れになりつつあります。
実際、5月25日から適用された欧州の「GDPR」は、そうした「人」基点のターゲティングによって寡占的な状況をつくり出しているプラットフォームのビジネスモデルに終止符を打つことを見据え、投じられた施策とも言えるのではないでしょうか。世界中から集積した個人情報を元に、莫大な利益を生み出す彼らから、収益の元となる個人データの権利を個人に戻すこと、個人情報に関するあらゆる権限は本人が持つべきであると、定められているためです。
この法の施行によって、広告主と消費者の間に介入しているプラットフォームの独占的な力を弱め、本来行われるべき経済活動が潤滑に行われること、それを欧州は期待しているのではないかと推察しています。
こういった潮流が起きている以上、当然、個人情報を含む「人」のデータをマーケティング活動で用いることは、規制が強まっていくと予想されます。データ主体者(=個人情報に関する権限を持つ本人)にとっても、プライバシーに対する意識は一層高まっていくでしょう。世論が高まるにつれて、行政もその時流を無視することはできなくなり、欧州や米国に限らず、日本においても法整備をはじめとした、急激な環境変化が起こる可能性が十二分に考えられます。
こうした状況を鑑みれば、欧州や米国で起きている動きは決して対岸の火事ではなく、日本企業も必然的にデータについて学ぶ必要性があると言えるはずです …