個人情報やデータ活用など、課題に直面しているデジタルマーケティング領域。広告・宣伝を担う私たちに求められている、本質的な課題はどこにあるのでしょうか。電通マクロミルインサイトの本間 充氏がマーケティングの未来も交えて解説します。
いつから、マーケティングは"マーケター主導"になったのか
みなさんには、親友がいるでしょうか?
社会人になると、なかなか親友というものはつくりにくいかもしれません。それは、社会人には、学生時代よりも人と付き合うときに多くの利害関係が生じるからでしょう。
このことは、お客さまとマーケターの関係においても同様と言えます。近年、ビッグデータやアドテクノロジーの進化で、マーケターは多くのお客さまのデータを取れるようになりました。そして、お客さまのデータが少しでも多く取得でき、そこから価値を見出せると、もっと取りたいと考えるようになります。しかし、お客さまはそれを望んでいるのでしょうか。
マーケティング活動において、お客さまとの関係は非常に重要です。そして、お客さまとの関係性を持続させようとすれば、なおさらお客さまとマーケターの関係は、相互的で、対等な関係を築くべきと考えます。
マーケターがどんなにお客さまのことを深く知りたいと願っても、お客さまの立場に立って考えれば、伝えたくないこともあるでしょう。そうしたお客さまが伝えたくないと思うことを、マーケターが無理に聞き出そうとすれば、お客さまとの関係は壊れてしまいます。これは、通常の親友との関係においてもよくある話でしょう。
個人情報を知っても、読み解けないこともある
マーケティング領域において、昨今、個人情報に光が当たっている理由には、お客さまの多様性の存在があります。また、マーケターが迅速に対応しなければならないからと言えるでしょう。
例えば、日本市場が、高度成長期の頃のように国民総中流であれば、これほど個人情報は重要とされなかったかもしれません。今は、同じ年齢の方が5名いれば、5名それぞれ、結婚状況や子供の存在、世帯年収などが大きく異なります。ほんの少し属性を示してみても、多様性が広がっている。そんな現状から、データを読み解く作業がいかに重要であるかは周知の事実だと思います。
しかし、こういった個人情報からは、わからないことが多いのもまた事実です。
個人情報をどれだけ分析しても、商品購入後の満足度は見えてきません。今後の将来設計のようなインタビューを行ったとしても、そのお客さまがその通りの人生を歩む保証もありません。つまり、多くの消費やサービス契約において、いくら個人情報を取得しても、そのデータから導き出せることはほんの一握りなのです。その、不確実さこそが、AIにない人間らしさであり、だからこそマーケティングとはその"人間"と向き合う仕事と言えるでしょう。
つまり、マーケターは個人情報とマーケティングの限界を知ること。そして、お客さまが自分のことを伝えたいと思ったとき、そのデータを大切に、しっかりと耳を傾け、きちんと一緒に考える。そんな仕組みを考えれば良いのです。
これは、新しい取り組みではありません。昭和の家族の典型、「サザエさん」で三河屋の三平さんがおこなっていた商売と少しも違わず、難しく考える必要はないのです …