かねてからデータを利活用したマーケティング活動が闊達に行われてきた米国。大量のデータを保有、提供する広告・マーケティング領域の米国のプレイヤーたちに生じている変化とは。ニューヨークの最新動向「MAD MAN Report」を手掛ける榮枝洋文氏が、米国を代表する5大ホールディングスの動きについて解説します。
5大ホールディングスにおけるデータに関わる役割の変化
DMPやタグマネジメントから進出してきた「CDPベンダー(CDP:Customar Data Platform)」の採用がブランド企業の中で進む折、海外の広告ホールディングス企業もグローバル・ブランドのために主要各国で共通して使える個人IDの蓄積を進めています。CDPベンダーが最も持ち合わせていないデータが「テレビを含むマスメディア・パブリッシャー」を巻き込んだセカンド・パーティ・データです。この部分にエージェンシーが提供するデータに価値があると考えられています。
それでは以下に、各社の大枠の概要を紹介しましょう(図表1)。
(1)Dentsu Aegis、Merkleの「M1」「PAM」
電通Aegisグループは米国の「プレミアム広告主」に向けて、厳選された協力パブリッシャー群(例AOL, Time Inc, Conde Nast, CBS Interactive, Weatherなど)のデータと、Facebook、Twitter、Google、Amazon等のネット上の行動データとを、「PAM」として、個人に近いオーディエンス・データを掛け合わせられるセカンド・パーティ・データ(メディアデータ)として提供しています。
さらに広告主側は、このPAMの利用を元にファースト・パーティ・データを投入することで、クライアントごとの個人IDデータが蓄積できるプラットフォームの「M1」を利用します。プレミアムな媒体に対するPAMを使った広告配信のテスト利用が進めば、M1のIDデータ精度が上がるシステムで、媒体データには利益マージンを乗せず、純粋に広告主が指定したターゲットへのインプレッションに対して課金する方式です。
電通Aegisは個人IDの管理を自社開発しておらず、2016年に買収した「Merkle」がダイレクト・マーケティングを手掛ける企業として、オリジナル技術を「ネイティブ」に管理・開発しています。GDPRの規制上、個人情報の管理では失敗できないというハードルがあるだけに、専門企業による強固な管理体制は他よりも強みがあります …