百貨店を取り巻く消費・産業構造の変化─今後の戦略をどう描くべきか?
百貨店が置かれた状況は、消費者の意識や行動、産業構造の変化など外部環境の構造的変化、百貨店の深い内部課題に起因しています。青山学院大学大学院教授の宮副謙司氏が、成長へ転じる好機か、低迷へ凋落かという歴史的な分水嶺にある現在の百貨店の今後を占います。
デジタルテクノロジーの進化は、ファション業界や百貨店のビジネスモデルにどのような変化を与えるのでしょうか。IT業界に詳しい編集者の久保田大海氏に話を聞きました。
スタートトゥデイの前澤友作社長の発言や、ジーンズやTシャツへの展開の表明から、ZOZOSUITを通じて、ベーシックアイテムを提供していくことが分かります。ラグジュアリー、トレンド、ベーシックと大きく3つに分けられるファッション市場の中で、同社は現在、トレンドを押さえています。次にボリュームゾーンであるベーシック、つまりユニクロが強い市場を獲りにいく狙いなのです。
現在のファッション業界の流通構造を考える上で、メルカリに代表される2次流通を欠かすことはできません。ベーシックアイテムは、メリカリ上で栄える商品ではなく、値段ももともと安価です。さらにZOZOSUITはSMLというサイズの基準がないため、流通しづらい。同社はとても賢い戦略を組み立てました。
また、ZOZOSUITから得られるデータの価値も高いでしょう。ネット広告をイメージすると分かりやすいのですが、現在はネット上で収集したデータから個人に最適化された広告を表示させ、その広告への反応から、さらに最適化された広告を表示させるというループが行われています。
ビジネスも同様、データを収集し情報化、それを知識、知恵へと転換させていく生態系が重要です(DIKWモデル)。通常、ファッション業界は、バイヤーがトレンドや売上、経験などから、次に販売する商品を選んでいます。その意味で、土台となるデータを同社がとるインパクトは大きいはずです。百貨店もベースになるデータを取りに行くモデルを構築できないと、デジタル上だけでなく、リアルな店舗の売上にも徐々に悪影響が出てくるでしょう …