ファッション系のネット通販サイトが成長する中、店舗を抱える百貨店はどのようにオンラインを活用していくべきでしょうか。日英の大手銀行やAmazonを経て、現在はファションO2Oアプリ「FACY」を展開するスタイラー CEOの小関翼氏に話を聞きました。
店舗とECが融合する世界 買い手と売り手の情報格差を埋める
2016年末、中国のEC最大手である阿里巴巴集団(アリババ)のジャック・マー氏が「ニューリテール構想」を打ち出しました。その中心的なコンセプトは、リアルな店舗とECサイトが融合して生まれる、新たな「O2O(Online to Offline)」。ECサイトと個人店が融合して、消費者と直接コミュニケーションを行いながら商品を販売して、より良い顧客体験を提供していくモデルです。
私も、この考え方に共感しています。それは、急成長するECサイトであっても、顧客の課題を全て解決してくれるわけではないからです。
私が前職で所属していたAmazonでさえ、苦手な領域があります。それは、売り手と買い手の情報の差が大きい衣食住です。Amazonは消費者の頭の中に欲しい商品の具体的なイメージがある時、キーワードで検索され、カタログのように商品が並んでいる中から選択されます。しかし、衣食住のような分野は、消費者の頭の中にふんわりとしたニーズしかなく、第三者から勧めてもらうことで意思決定する機会が多いのです。
例えば、どの家に住むのか、どこで食事をとるのか、どんな仕事をするのか、そしてファッションもそうです。家であれば不動産会社、食事であればグルメサイト、仕事であれば人材サービス、そしてファッションであればメディアや店舗の販売員など、意思決定の主体者とモノやサービスとの間に、代理業やメディアなどの仲介者が存在します。明確な正解が無く、選択肢も多いため、消費者は意思決定しづらく、専門家に頼らざるを得ないのです。
つまり、このような領域の商品には、買い手と売り手の情報格差を埋める「リテールの革新」が求められています。そして、そのヒントは中国をはじめとしたアジアにあると考えています。
ECサイト上で消費者と会話 コミュニケーションで商品が売れる
11月11日は、アリババをはじめ中国のECサイトが一斉にセールを行う「独身の日」です。2017年、その1日で売り上げた金額は、2.9兆円にも上りました。
日本企業の中では、ユニクロが健闘しています。アリババグループ「TMALL(天猫)」における「独身の日」の売上ランキングで、ユニクロがレディース1位、メンズ2位にランクインしました …