2018年に300周年を迎えた大丸松坂屋では、百貨店の持つ資産を活用しながら、次のビジネスモデルを探る動きを始めています。その動向と今後の展望について、同社 代表取締役社長の好本達也氏に聞きました。
一等地にある店舗と顧客からの信頼が資産
──百貨店の苦境がニュースになる一方で、各社が新しい試みにも挑戦しています。現在の、百貨店のビジネスモデルについて、どのように感じていますか。
百貨店のビジネスモデルが、根底から揺らいでいるのは間違いない事実です。しかし国内に1店舗あたりの売上が2000億円を超える百貨店があるように、「日本人が百貨店好きである」ということも事実だと思います。
山手線沿線に13店もの百貨店がある都市は、世界中を探しても見つかりません。日本は中流層が厚く、その人たちの贈り物や冠婚葬祭など、日常のハレの場として百貨店が利用されてきました。日本独自の文化の中で、百貨店が育ってきたのです。
ただし少子高齢化という、人口動態の大きな変化が起きています。バブル後世代、いわゆる好景気を知らない世代が40代に入りました。百貨店にも若い世代の趣味嗜好への対応が求められています。そのための典型的な例が、「GINZA SIX」でしょう。品揃え豊富な「百貨」ではなく、伸長する分野に事業を収斂させて、高コスト化する要素をできる限り排除しています。我々の仮説を現実化させて生まれた、いまの時代感にフィットしたビジネスモデルです。
──現代にも生かすことのできる、百貨店が持つ資産とは何でしょうか。
代表的な資産は、2つあると考えます。ひとつは日本の一等地に、店舗を持っていることです。立地産業と言われますが、まさにその通りだと思います。例えば、「GINZA SIX」のように、銀座にあれだけの広さの土地を新たに持とうとすると、莫大な費用が掛かるでしょう。
もうひとつの資産は、長年かけて培ってきた、お客さまからの信頼です。これは、何ものにも変えがたい価値だと思います。包装紙や熨斗に包んで、お中元やお歳暮を渡す習慣には、百貨店への信頼があると考えています。
──顧客からの信頼をどのように維持し、広げていくのでしょうか。
お客さまに信用していただき、固定客になっていただくことが大事です。従来のビジネスモデルでは、それをカードに頼ってきました。もちろん商品の品揃えや顧客対応の質の高さ、テレビCMや新聞広告によるマスへの訴求がベースにありながらも、外商のカード、自社発行のクレジットカード、あるいはポイントカードを発行し、お預かりした個人情報を拠り所にお客さまとワントゥワンの関係をつくってきました …