ラボドリブン・ビジネスで埋もれた研究に光を当てる
企業が扱うにはリスクがある課題や収益性を見込めない研究や、世界中で生まれるアイデアや技術を集め、3Dデジタルの技術を用いてプロトタイプをつくり、興味のある企業に橋渡しをするのはラボドリブン・ビジネスを基軸に起業したデジネルだ。
「かねてから、せっかく生まれた技術やアイデアが活用されずに埋もれていく様子を"もったいない"と思って見ていた」と語るのは同社のCEOの原雄司氏。技術やアイデアを具現化して企業に橋渡しをしようと2017年7月に共同代表 井出まゆみ氏と共に会社を立ち上げた。
元々3Dソフトの開発を手掛けていた原氏。前職では3Dプリンターやスキャナーの販売とソリューションビジネスに携わった。「3Dの技術を使って、何か新しいサービスをつくれないか」と模索をしたが、実際には機材販売に従事せざるを得なかったという。そこで、デジネルではラボドリブンという形にこだわり「自らビジネスはしない」決意で起業をした。
「例えば新しい技術やアイデアの開発というのは0から0.1を生み出すようなこと。私たちはこの0.1の状態を1にする、つまりはプロトタイプをつくり企業に渡す役割を果たしている。あくまで関わるのはプロトタイプをつくるところまで。その後、1を100にするビジネスをつくり、育てるプロセスには関わらない」と説明する。
現在、原氏は30年以上かけて培ってきた、3Dデジタル関連の技術や知識、経験をもとに大手の企業はもちろん起業家や、クリエイター、アーティスト、学校・教育機関など、規模の大小や業種を問わず、アイデアを形にする支援を続けている。
これまでのラボドリブン・ビジネスの具体例としては、国内の大手メーカーと組んだネイルチップを3Dプリンターでつくった実績を紹介。
「既製品のジェルネイルやシールは、爪に合わないという問題があった。デジネルでは技術検証に多くの時間を費やし、顧客の爪をスキャニングしてデータを登録。あとからアプリで自分にぴったりなネイルチップを購入できるしくみをつくった。大手の企業では、なかなか新しい事業の理解を得て形にするのは難しいが、3Dデジタルの技術を用いると、試作品もスピーディーに形にできる。ラボドリブン・ビジネスの実例」と効果を強調した …