業務プロセス改善にフォーカス 独自ソフトウェアを開発
2014年10月にアメリカで起業したVR専用のソフトウェア会社 DVERSE.Inc(ディヴァース・インク)。まだ新興のVR市場の中でも、特に異色と言えるのがその事業領域だ。
これまでVRと言えば一般的にエンタテインメント領域を中心に発展してきた。しかし、同社では建築や土木、デザインといったビジネス領域の業務プロセス改善にフォーカスしたソリューションとして研究開発を進めているのだ。
代表の沼倉正吾氏は「2013年にアメリカのオキュラス社が開発したVR用ヘッドマウントディスプレイを取り寄せ、衝撃的な体験をしたことが会社設立のきっかけ。その技術の未来に非常に可能性を感じたものの、当時の日本では出資者の理解を得られるまでには至らなかった。そこでアメリカで起業することに決めた」と起業のきっかけを話す。
ひとたびVRゴーグルをかければ、従来型モニターでは決して体験できなかった空間の広がりや大きさ、高さなどが体感できる。PCやスマートフォンが数10年かけて築いてきた進歩を一気に先行するユーザーエクスペリエンスをしたことで、まったく新しい市場ができると沼倉氏は考えた。
同社が現在、同社の主力となる建築・土木業界向けVR制作ソフトウェア「SYMMETRY(シンメトリー)」の開発を始めたのは2015年のこと。当初はエンタテインメント業界向けコンテンツを制作していたものの、この技術をデザインや建築に使えないだろうかと相談を受けたことが転機となった。
「例えば、建物に入ったときの天井の高さや室内の明るさなど、感覚的なものは図面だけではどうしてもわからない。VRは、完成後に生まれる現場の齟齬やトラブルを解消する手段として、非常に可能性の高いツールであるという気付きがあった」(沼倉氏)。そこで2016年からは、ビジネス向けのVRソフトフェア開発会社へと大きく舵を切ることになった。
一瞬で理解が得られるわかりやすさが強み
沼倉氏は現在、無料で提供しているVRソフト「シンメトリー」の特徴としてまずは、わかりやすさを挙げる。「従来のカンプやパース画は、図面をあるひとつの角度から見たもの。違う角度から見た場合や建物内を歩くときに動線は適切に設計されているのか、などは検証も共有もできない。それが『シンメトリー』を使えば、完成イメージをすぐに共有することができる」と沼倉氏。
次に同氏が挙げたのが、シンプルな操作性だ。建築などの設計では、通常3DCADデータを作成する。「シンメトリー」は3DCADデータがあれば特別にデータをつくらなくとも、それを読み込み、VR内で実寸で再現してくれる。「新規でつくらなければならないデータは何もない。今までの業務データファイルをそのまま読み込んでもらえれば、VRの中で完成イメージを体感できる」(沼倉氏)。
また、新しく覚えるプログラムなども不要なため、テクノロジーに詳しくない人でも手軽に試すことができる。ある電機メーカーでは新商品の完成イメージを「シンメトリー」を使って、役員クラスに説明して承認を得ているという ...