
(左)1987(右)2017
約1800億円と日用品の中でも、巨大市場を形成している衣料用洗剤。花王、P&G、ライオンの大手3社がしのぎを削っている。その中で現在、3割を越えるトップシェアを持つブランドが、花王「アタック」だ。1987年に当時としては斬新な商品形状と、酵素技術による洗浄力を打ち出して発売。
それ以来、30年間にわたってトップシェアを維持し続けている。同社で「アタック」のブランドマネージャーを務める野村由紀氏は、「消費者の洗剤だけでなく生活に対する意識や、汚れの実態をつぶさに調査し、最新の技術開発とともにそれぞれの時代にあった洗浄を提案してきたことが、長期間にわたって市場を牽引できた理由」と語る。
野村氏によると、衣料用洗剤のマーケティングにおいて重要になるのは「汚れ」「洗濯機」「主婦の意識」の変化を見ていくことだという。30年の間に外で遊ぶ子どもが減少し、目に見える服の汚れに対する意識が低下。その一方で、見えない汚れの「におい」や「菌」への対応が求められるようになった。
また、洗濯機も2槽式から全自動型へ移行し大型化が進むことで、溶けやすく、より少ない水でたくさんの量が洗える洗剤の性能が重視されるようになってきた。さらに働く女性や単身世帯などの増加で部屋干しをする人も増え、「におい」への対応や洗濯時間の短縮が求められるようになった。
そうした変化に対応して、衣料用洗剤も粉末タイプに加えて、液体タイプ、濃縮タイプなど形状が増えていった。「アタック」も2008年に液体タイプ「アタック バイオジェル」を発売。その翌年には濃縮タイプ「アタック Neo」を発売している。
「衣料用洗剤市場は価格競争が激しく、価格が下落しやすい。トップメーカーとして、高付加価値の商品を提供し、市場を活性化していくことも重要な役割」と野村氏。2009年発売、2.5倍濃縮の「アタックNeo」では、すすぎ1回で節水・節電・時短を提案。部屋干しなど生乾きの「におい」の原因菌を発見し、2011年には菌の増殖を抑制する「アタックNeo 抗菌EXパワー」を発売した。現在では、高付加価値の濃縮タイプへの移行を進めている。
「消費者は粉末タイプから、すぐに濃縮タイプには移行せずに、その間に液体タイプを挟むなど、段階を踏むことがわかっている。また、競合商品からのブランドスイッチも、同じ形状にいくことが多く、形状とブランドの両方のスイッチは起きづらい。そこで10年レンジで形状と競合の壁を越えた移行を促せるように取り組んでいる」。
視点01 商品開発
技術開発に力を入れてきたブランド
30年前の衣料用洗剤は、容量が4.1kgなど、買い物カゴを占拠する大きなサイズで、箱そのものを傾けてカップで計量するタイプが主流だった。
それが花王「アタック」では、取っ手の付いた小型サイズで持ち運びしやすく、洗剤をスプーンで測るスタイル ...