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「販路」多様化時代のメーカーの戦略

大規模小売チェーンにメーカーはどう向かい合うべきか

東洋大学 経営学部マーケティング学科 教授 住谷宏氏

チェーン・ストア化によって大規模化した小売業は、巨大な販売力を背景にメーカーに対して強い交渉力を持つようになっています。一方で、消費者がECサイトでの購入を増やしたり、メーカーとの直のコミュニケーション・サービスを望んでいたりするのも事実。消費財メーカーは、小売業や消費者にいかに向き合っていくべきか、東洋大学 経営学部マーケティング学科 住谷宏教授に解説してもらいます。

メーカーが進める新たなチャネル戦略

大規模化した小売チェーンへの対応は、まず「企業レベルでのチャネル戦略」と「小売チェーン対応部署のチャネル戦略」に分けて考える必要がある。

(1)企業レベルのチャネル戦略

企業レベルで考えなければいけないチャネル戦略としては、(1)損益分岐点比率の引き下げ、(2)消費財以外の分野への進出、(3)小売チェーンを経ないチャネルの開拓・育成、(4)販売依存度の分母を大きくするための営業組織変更、(5)品揃えへの影響力を高めるためのM&A、(6)情報共有に基づく効率化戦略の提案、(7)共生チャネル戦略、(8)共同販売会社の設立、などがある。ここでは誌面の関係から、(3)の「小売チェーンを経ないチャネルの開拓・育成」だけを概説する。

小売チェーンへの販売依存度をできるだけ引き下げることを考えて、小売チェーンを経ないチャネルの開拓・育成をすることが望ましい。その方法は、次のように多様である。

[a.自販機]

清涼飲料水、タバコ、ビール、日本酒などの自販機が目につくが、江崎グリコは「セブンティーンアイス」というアイスクリームの自販機で成功している。自販機で販売する商品は、基本的に特売がないので、利益確保しやすい。

[b.オフィス市場の開拓]

たとえば、1997年からスタートした江崎グリコの「オフィスグリコ」。オフィスに3段のプラスチックボックスに入ったグリコの菓子を置いて、担当者が1週間に1 ~ 2度補充するというものである。事業開始から14年で、設置台数は11万台を超えた。年商も40億円を超えている。2016年6月1日からグリコチャネルクリエイト社を設立し、分社化している。同社は、オフィスグリコと、百貨店での直営事業を担当し、2019年3月期までにオフィスグリコを現在の2割増しの63億円規模にする計画を持っている。

また、「ネスカフェ アンバサダー」プログラムもオフィス市場の開拓に成功した例といえる。ネスレ日本のコーヒーマシンをオフィスに無料で設置し、淹れたてのコーヒーを安い価格で楽しめるようにした。その上、そのコーヒーマシンの管理、材料の仕入れ、代金の支払いはアンバサダーが担当してくれる。アンバサダーはそのオフィスで働く社員である。2016年8月時点、アンバサダーは26万人までに増加したと報告されている。

[c.ネット通販]

ネット通販への参入は低コストでできるので多くのメーカーが参入している。ただ、ネット通販に参入する場合、チェーン小売業で販売していない商品に限定する、定価で販売する、などの配慮をしている。たとえば、ロッテのネット通販の会員数は100万人を超えている ...

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