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「販路」多様化時代のメーカーの戦略

テレビCMは誰のため?販売チャネルの呪縛とメーカーの苦悩

フリーライド 代表取締役 今 敏之氏

商品やサービスの認知率を一気に高めることができる一方で、多額の費用が掛かる「テレビCM」。消費者向けのプロモーションだけでなく、流通対策としても実施されているのは周知の事実です。元消費財メーカーのマーケティング本部長であり、現在は企業の商品開発やマーケティングをサポートする企業フリーライドの代表取締役を務める今敏之氏は、テレビCMの必要性を改めて考えるべきタイミングを迎えていると語ります。

本当に必要なの?メーカーの過剰な流通対策

私はメーカーで宣伝広告を担当していた頃から、「テレビCMとは誰のためなのか」という問題意識を持っていました。多くの場合、メーカーのテレビCMは新商品やキャンペーンを消費者に告知することを目的に行われます。一方で、メーカーの商品は小売店の棚に並ばなければ、売れません。そこでテレビCMの出稿量を小売・流通企業に対して配荷するための交渉材料として活用するわけです。

もちろん、それ自体になんら問題はなく、企業の戦略上、必要であれば、流通対策として実行すべきです。しかし、本来の目的や効果を定めないまま、小売・流通のバイヤーから「テレビCMを何GRP打つの?」と聞かれ、営業担当者から宣伝部に「テレビCMを行わないと売れない!」という要望がくるなど、行き過ぎた対応も見受けられました。

これは小売・流通側というよりも、メーカー側の意識にも問題があります。小売・流通は基本的に、売れる商品を限られたスペース(棚)に並べ、他社よりも安く提供したいと考えています。そこでメーカーは要望を過敏に察知し、商品のサイズさえ、棚の大きさに合わせてつくるようになっています。本来、メーカーは消費者の未解決の課題を発見し、それを解決する商品をつくることが使命ですが、小売・流通のバイヤーのために商品を開発するということが起きてしまうわけです。

SNSが起点になり 商品がヒットする時代

一方で最近、テレビCMに頼らなくても、商品が売れるということが起きています。私は昨年、発売されたコバエ駆除の「蛙田捕太郎(かえるだ とったろう)」(製造・販売:ウエ・ルコ)という商品の開発に携わりました。

1年目はある小売チェーン限定で販売したのですが、蛙という形態とネーミングのユニークさがSNS上で話題を集め、完売しました。すると、2年目はさまざまな小売・流通企業から、「当社でも扱いたい」と逆に声を掛けられる事態が起きました。この商品のようにテレビCMを実施しなくても、商品がヒットするという事例が数多く生まれています。

テレビCMの費用は高額です。1億円を投下すると、到達率はある程度の高さまで上がりますが、それによって売上がどこまで上がるかは明確にできません。そのため、PL(損益計算書)が書きづらい。そうした中で、小売・流通側から望まれているからと、前例に倣って、単純に出稿量を決めてしまうことには疑問を覚えます。差異化できない商品を売るため、トップシェアなので市場規模を維持するため、携帯キャリアのように認知や想起率が重要なビジネスモデルなど、数億円を投入することの目的を改めて明確化する必要があるでしょう ...

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