消費財メーカーが消費者とダイレクトに結びつくことには、どのような効果や可能性があるのでしょうか。

総合美容サイト「ワタシプラス」のトップページ(左)とオンラインショップ(右)。
高まるEC化率 資生堂の戦略とは
消費者向けのEC市場が拡大するなか、さまざまな分野でEC化率(商取引の中でのECが占める割合)が高まっている。経済産業省の調査では、2016年に各分野で最も高いのは「事務用品、文房具」の33.61%、続いて「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」の29.93%。一方で「化粧品、医薬品」は5.02%と低いが、前年からの伸長率が12.1%と拡大傾向にある。化粧品でも店舗のみならず、ECサイトやメーカーの直販サイトなど、販売チャネルが多様化しているのだ。
資生堂の総合美容サイト「ワタシプラス」も、2012年に顧客との新たな接点を創出することを目的に開設された。「マス広告や店舗だけでは、出会えないお客さまが増えている。そうしたお客さまと接点をつくり、満足度を高めていくためにECというチャネルが必要になった」と、資生堂ジャパン EC事業推進部長の徳丸健太郎氏は語る。
「ワタシプラス」では、資生堂の化粧品やメイクアップ商品を購入できるほか、店舗紹介、美容相談など多様なコンテンツが用意されている。化粧品の正しい使い方を紹介する「キレイの基本」や「肌に効くお料理レシピ」など、充実の美容情報だ。同社の会員組織である「花椿クラブ」とネット会員を統合するかたちで生まれ、現在の会員数は約300万人にも及ぶ。
その価値について、徳丸氏は「新商品の告知やアンケートなど、低コストでスピーディーに300万人にアプローチできるメリットは大きい。特に、メーカーのECサイトはブランドのファンと出会い、関係性を中長期的に深めていくことに向いていると感じる」という。
メーカーECサイトの差別化ポイント
メーカーとしてECサイトを運営するなかで、その役割として見えてきたのが、顧客のロイヤリティを高めていくことだ ...