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Marketing Innovation Summit

日本航空×パルコ×フォトシンス「IoTが切り拓くマーケティングの可能性」

日本航空×パルコ×フォトシンス

近年、あらゆる業界で注目が高まっている「IoT(internet of things)」。「モノのインターネット化」を指す技術革新によって、マーケティングにはどのような可能性が拓かれるのか。注目度が高い反面、理解の浸透が進まず、導入にも二の足を踏む企業多い中、先進的にIoTを取り入れている3社に、その可能性について語ってもらった。

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藤山健治 氏(左)、林 直孝 氏(中)、河瀬航大 氏(右)

時代に応じたサービス開発に積極的に取り組む

──自己紹介を兼ねて、皆さんのお仕事について教えてください。

:私が所属するWEB/マーケティング部は今年3月にできたばかりの新しい部署です(前身はWEBコミュニケーション部)。スマホやSNSへの対応を課題とし、Webサイトのリニューアルやアプリの開発、パルコ館内のWi-Fi、デジタルサイネージ環境の整備など、デジタルを活用したお客さまとのコミュニケーション施策に取り組んでいます。

藤山:Web・コールセンター企画グループは、ITや営業など、さまざまな経験を持つ社員40人が集まった組織です。JALにとってWebは、以前はIT、もしくは会員組織に紐づくものという考え方でしたが、5年ほど前からWebによるコミュニケーションが重視され始めました。そのため、現在はSNSへの対応、機内でのネット環境を整備してどのようなサービス活用に結び付けていくか、などの施策を総合的に担当する部署に成長しています。

河瀬:フォトシンスはベンチャー企業で、スマホで鍵を開閉する「Akerun(アケルン)」というスマートロックロボットを製造しているメーカーです。私自身、フォトシンスを創業する以前は、ベンチャー企業でソーシャルメディアの運営やアクティブサポートの支援などを行っていました。当初は、人と人がネットでつながること自体に興味があり、何か面白いことができないかと考えていたのですが、だんだんと人とモノ、人とマシーン、人と植物などがネットでつながれば、もっと広い意味でのソーシャルメディアや世界観が広がり、新たなコミュニケーションが生まれるのではないかと考えるようになったんです。まさに、今回のIoTと同じような発想なのかもしれません。そこで、まったく経験はなかったのですが、IoTをフックに製造現場に飛び込み、現在に至ります。

:当社では昨年、ICTを活用した施策の一環として、自社のスマホアプリ「POCKET PARCO(ポケットパルコ)」を立ち上げ、その実証実験を2014年11月にオープンした福岡パルコでスタートしました。アプリのメインコンテンツはテナントさんのブログです。お客さまが、ブログを見て気になった商品をクリッピングしたり、来店してチェックインすると、コインと呼ばれるポイントが付与されるなどの仕組みをつくっています。それまでは、お客さまの情報は購入時点のPOSデータでしか把握できませんでしたが、ポケットパルコによって、個々のお客さまの嗜好性や、来店されたタイミング、どのようなショップで購入されたかといった一連のサイクルを把握できるようになりました。

藤山:それによってどのくらいの効果が上がったのですか。

:ポケットパルコにカード情報を登録してくださっているハウスカード会員の方は、未登録のハウスカード会員の方に比べて、サービス開始後の最初の1カ月で客単価が1.5倍に上がりました。ポケットパルコは今年の3月から全国展開を始めたのですが、3月から5月までの3カ月間で、ポケットパルコご利用のカード会員の客単価は通常のカード会員の1.85倍にまで伸びており、非常に大きな効果が得られています。WEB/マーケティング部になった現在は、施設のICT環境を整備したプラットフォームをつくり、ポケットパルコから得られたデータを活用して、ロイヤルカスタマーを育成する施策を進めています。

藤山:しっかり成果を出されている点が素晴らしいですね。JALの施策としては、2012年よりICによる非接触サービス「JALタッチ&ゴー」のスマホアプリを提供してきました。スマホから航空券の予約・購入ができるほか、空港にiBeaconを設置して、保安検査場に近づくと、搭乗便名や座席番号、搭乗口が掲載された搭乗案内の画面が表示され、搭乗口でも端末にスマホをかざすだけでスムーズに搭乗できます。これからの世の中はあらゆるものがネットでつながり、そのデバイスもスマホなどが中心になると考えています。利便性が高まることで、我々とお客さまのリアルな接点がどんどん減っていきますが、お客さまからサービスが低下したと思われないよう、時代に合ったサービスに取り組む必要があります。同時に、私の部署は販売も担当している部署ですから、サービスの向上を売上にどう結びつけるかという観点も欠かせません。

河瀬:Akerunは後付型スマートロックロボットであり、Akerun自体を扉の内側に取り付け、スマホにアプリをダウンロードすると、スマホの画面上で鍵の開閉ができるようになります。操作はシンプルで、アプリを起動すると、自分が管理している部屋の一覧が出ます。イメージとしては、スマホの中に鍵束がある状態です。それをクリックすると鍵の開閉ができる。AkerunのデバイスはBluetoothにつながっていて、スマホを通じてネットに間接的に接続した状態になります。鍵をネット化すると、誰がいつ開閉したかという利用履歴がネット上に残り、鍵の権限を電話やLINE、Facebookで常時シェアすることも可能です。これまでのようにジャラジャラといくつもの鍵束を持ち歩いたり、ポストの中や植木鉢の下に鍵を隠しておいたりする必要もなくなります。ログを見ることで閉め忘れのチェックもでき、何時から何時までと、時間帯を限定して鍵をシェアすることも可能です。例えば、アルバイトの勤怠管理などにも利用できますし、追加開発で震度5以上の地震だと鍵が開くように設定する緊急時の対応など、用途も多岐に広げることができると同時に、セキュリティも完備しています。今後、他の企業とも協業し、蓄積した開閉ログなどのデータをマーケティング施策に生かすこともできるのではないかと考えています。

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予約便の運航状況や搭乗口、搭乗のタイミングを知らせるアプリ「JAL Countdown」は、ウェアラブルデバイスである「Apple Watch」に対応。アクション型通知によってフライトの運航情報や搭乗口の詳細、搭乗時刻などをリスト(手首)の上で確認できると同時に、出発10分前までの残り時間をカウントダウン表示。安心してフライトの前に買い物や食事、休憩をとることができる。さらに、2次元バーコードによるタッチ&ゴーにも対応し、保安検査場、搭乗口やラウンジでApple Watchを使って手続きが可能。

また、Apple Watchのカスタマイズ機能を活用すれば、飛行機が離陸する時間に合わせて飛行機が飛び立つアニメーションを表示するなど、ワクワク感を演出する。

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Apple Watch画面上の「JAL Countdown」。

ウェアラブルやiBeaconを活用実証実験から見えてきたこと

── IoTについて、具体的にはどのような取り組みをしていますか。

:2014年の秋、名古屋パルコが大規模なフロア改装を行った際に、改装によって顧客行動がどのように変化したかを調査するため、改装前後にビーコン端末とスマホを組み合わせた行動分析を行いました。館内全フロアにおよそ300のビーコン端末を設置し、ご協力いただけるお客さまに専用のアプリがインストールされたスマホを貸し出し、館内を回遊してもらいました。スマホアプリがビーコン端末の情報を受信して位置を割り出すので、お客さまがどのように館内で行動しているのかという動線データを取得できました。それに加え、回遊中に買い物をしたのかどうか、口頭で確認しました。パルコの入口には入館センサーがついているので、これまでも入館者数や滞在時間は把握できていましたが、個々のお客さまの入館後の行動は把握できませんでした。ビーコン端末でパーソナルなデータが取得できるようになると、より効果的な集客・キャンペーン施策を打つことができるようになるのでは、と期待しています。

藤山:JALが実施した実証実験では ...

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