病院・施設のリネンサプライや清掃などの事業を手掛けてきた特殊衣料(札幌市)。顧客のニーズをもとに福祉用品の商品企画に乗り出し、開発したのが頭部保護帽の「アボネット」だ。現在では防災への関心の高まりなどからターゲットが拡大、「ブランド育成」の視点が必要になってきた。
日本自動車研究所(JARI)と共同開発した保護帽「abonet+JARI(アボネットプラスジャリ)」。子どもからお年寄りまで幅広い年齢に受け入れられるよう、ハットやキャップなど6種類のデザインがある。カラーバリエーションを含めると、全部で25タイプ。2012年度グッドデザイン賞受賞。
年間1万個売れる「保護帽」
一見するとファッションアイテムに見える、ごく普通の帽子。ところがかぶることで、転倒した時の頭部への障害リスクを約6割低減できる――。そんな機能性を備えた「頭部保護帽」を企画開発しているのが札幌市に本社を置く企業、特殊衣料だ。
同社では2000年から、てんかんなど何らかの障害を持ち、転倒のリスクのある人向けの頭部保護帽のブランド「アボネット」を立ち上げた。「軽くて洗えるおしゃれな保護帽が欲しい」というニーズに基づき、札幌市立高等専門学校(現・札幌市立大学)と札幌市経済局との産学連携による福祉用具のデザイン開発・研究プロジェクトを立ち上げ、開発されたものだ。
現在のラインアップは8種類。最も安全性の高いヘッドギア型の商品から、室内向けの保護帽、手持ちの帽子に装着するインナータイプのもの、スポーツなどの場面で使える帽子など機能性やデザインも多様で、年間約1万個販売している。主な販路はカタログ販売やECサイト、ホームセンターの介護用品売り場、企業の作業現場や工場のほか、福祉用品を扱う企業への卸売りなどだ。
日本自動車研究所と共同開発
「アボネット」の誕生から10年を経た2011年には日本自動車研究所(JARI)と共同で、ファッション性がありながらも通勤・通学、子どもの外遊びや体育の時間、また防災用品としても広く使える「abonet+JARI」シリーズを開発した。
自動車の衝突安全性能評価試験用の人体ダミーを用いた衝撃試験の結果に基づき、ポリエチレンビーズを緩衝材として使用したもので、定価は6000円~7000円。お年寄りから子どもまで幅広い年齢向けまで6タイプのデザインがある。
商品企画を担当している特殊衣料の澤田亜沙子氏は「特に東日本大震災後に防災用品のニーズが高まったことで、福祉・介護の場面以外でも保護帽が注目されるようになった」と話す。