大学広報ゼミナール「高崎商科大学」編の最終回となる本稿では、「マーケティング」そして「大学広報という役割」の意義についてお話ししたいと思います。
広報担当者の皆さんであれば、意識の有無にかかわらず、マーケティング的な思考でものごとを実践されていることと思いますが、血肉とするためにも、改めてマーケティングを学ぶべきでしょう。マーケティングを学び、過去の事例や概念に触れることは、多くの施策や考え方のパターンを教えてくれます。そして、自身の活動の整理整頓にも役立つことと思います。
プロイセンの宰相ビスマルクは「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という名言を残しました。自身のわずかな経験からではなく、多くの参考事例やデータベースから広報活動を判断していくことで、賢者にもなりえると思います。しかし、過去の事例や理論のみにとらわれ、セオリー通りに実践することもまた、好ましい行動とは言えないでしょう。
『三国志演義』には、「泣いて馬謖を斬る」という有名な言葉があります。軍師・馬謖は諸葛亮が計画した“戦略”を無視し、兵法のルールに則った“戦術”を選択し大敗を喫します。軍法を重んじる諸葛亮は、愛弟子である馬謖を涙ながらに処刑します。「策士策に溺れる」という言葉があるように、これは馬謖が戦略というシナリオを脳裏に描けず、戦術のセオリーに従った結果と言えます。「兵に常勢なく、水に常形なし」という孫子の言葉通り、戦いは常に形を変えるもので、セオリー通りの戦術で勝つことは難しいものです。
本学の教員との雑談で、研究という研究はほとんどなされているが、その隙間にある誰も気づかなかった“オリジナリティ”を発見することは快感であり、研究の楽しみであるという話をしたことがあります。マーケティング・マイオピア(近視眼的マーケティング)に陥らないように、自分の考える“オリジナリティ”を大切にし、“マイセオリー”としての戦略を構築することも広報活動の楽しさとも言えます。
マーケティングを学ぶことを通して、過去を知り、人々の感情やたくさんの要素に触れることは、未来を予測する力をつけることにつながります。そのような「洞察力(インサイト)」とも言える能力を磨けば、応用力のある、優秀な広報パーソンとして活躍することもできるでしょう。
本稿のタイトルを「未来志向でいこう」としましたが、それは、希望的観測で夢を描こうということではありません。5年後、10年後を見据えて、洞察力を駆使して、中長期にプランニングをしようという意味です。
「広報会議を読もうよ」
1年間にわたる連載を振り返ります。
第1回で紹介の書籍『企業内人材育成入門 人を育てる心理・教育学の基本理論を学ぶ』(中原淳編著、ダイヤモンド社)では...